茶箱
女性の生き方を考える物語だったわ
中学受験生だけでなく、お嫁にいく年ごろの女性たちにも読んでほしいわ
まはら三桃『思いはいのり、言葉はつばさ』
【著者】まはら三桃
【出版社】アリス館
2020年、桜蔭中学校の国語入試問題として出題されました。
茶箱
まはら三桃さんの作品は、女子中ではほんとうによく出題されるわよね
あらすじ・読みどころ
中国・湖南省に実際に伝承されてきた文字(女書)をテーマにした物語。
漢族のチャオミン10歳が、憧れの女書を習いに行くことから物語は始まる。
チャオミンは、女書を習いに行き、女だからの楽しさ、女だからこその辛さを知ることになる。
憧れのお姉さんシューインとの結婚を機にした別れ、別の村から逃げてきていたシュウチ―とのほのかな恋心など、チャオミンは女書を習いながら、日々の暮らしを通して、女の生き方を知っていくのだ。
また、友達のジュアヌ、祖母と母の関係性などから、民族の違いにも気づくようになっていく。
茶箱
昔の中国の物語で、民族の違う人たちの暮らし、女性にとって結婚が辛いモノだったこと、女の人だけしかわからない文字があったことなど
現代の自分とはまったく違った世界の物語とおもいきや、実はそうでもないかも
同じような社会が、昔の日本にもあっただろうし、今でも同じような生き方をしている女性もたくさんいると思うのよね
● 女の生き方
● 民族の違い(考え方、慣習など)
● 社会の矛盾に「どうしてなんだろう?」と純粋に問い続けるチャオミンの成長
2020年桜蔭中学入試(国語)の入試問題を解いてみた
茶箱
出題された部分は
1つ目➡チャオミンが女書を始めて習う
2つ目➡祖母(父方の母)が女書を知っているらしいチャオミンの母を否定する
3つ目➡チャオミンが女書を書くの楽しさを知る
4つ目➡憧れの姉シューインの結婚式 シューインが仲間たち、チャオミンの母からの手紙を読む
と、4つのパートに分かれているわよ
問題のテーマになっているのは、女として女書を書ける喜びと、女としての結婚の辛さだと思うわ
文章問題はたっぷり長め
問題は少な目で記述問題が3問
大人の私が解いてみた!
● チャオミンだけでなく、登場する女性たちそれぞれの気持ちを読んでいく必要がある
● 出題者は問題を解かせるよりも、物語を読んでいろんなことを考えてほしいと思っているような気がした
茶箱
チャオミンのお母さんが姑からイヤミを言われたりと、テレビドラマ「渡る世間は鬼ばかり」をみているようなシーンもあるわ(笑)
落ち着いて物語の世界観に入りこめれば、答えやすい問題だと思ったわよ
大人の女性としては、チャオミンの母が結婚した先輩女性として、結婚するシューインに贈る言葉にホロリときたわ
物語のおもしろさに引きこまれて、試験後にこの本を読んでみたいと思った受験生が多かったんじゃないかしらね
まはら三桃『思いはいのり、言葉はつばさ』役立つちょこっとメモ
中学受験生へのおすすめ度
★★★(3点満点)
特に女の子におすすめ
女親も涙がでるほど物語に入りこんで読んでしまうはず
●主人公:10歳になり女書を習いだすチャオミン(女の子)
●舞台:昔の中国
●フリガナあり
●本の長さ:252ページ(単行本)
●初版:2019年7月
●作者のまはら三桃さんは1966年生まれ
2011年に『おとうさんの手』(講談社)が、2016年には『白をつなぐ』(小学館)が読書感想画中央コンクール指定図書に選定
『鉄のしぶきがはねる』(講談社)で2012年坪田譲治文学賞、2013年にJBBY賞を受賞した
2018年『奮闘するたすく』(講談社)が青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選定される
茶箱
まはら三桃さんの『思いはいのり、言葉はつばさ』は、昔の物語のようで、現代にも通じる女の生き方が書かれた物語だったわ
”女だから”という生き方
表面上や世間体的に女性への偏見がなくても、実際には『思いはいのり、言葉はつばさ』に登場する女性たちと同じような辛さを味わっている女性はたくさんいるわ
まあ、男性だって”男”ということで辛い思いをする人もいるし、男だから女だからとは言えないのよね
結婚だって辛いだけじゃない、楽しいことも、もちろんたくさんあるし
人生には良い悪い、楽しい辛いで判断できないことだらけよね
中学受験生も親も、夢中で読める本だと思うわ
親としては娘が結婚するときに、もう一度読んでほしい本でもあるわね
*読みどころや試験問題の感想は、あくまでも私個人の意見です。
続けて学ぶための本は?
まはら三桃さん『零から0へ(ゼロからゼロへ)』
戦後日本 鉄道開発に燃える男たちの物語ですが、主人公の聡一のそばにいる女性たちにも注目!
夫を戦争で亡くした聡一の母、満州から引き揚げてきた同僚の寧子といった女性の生き方にも注目して読んでほしい本です
2021年1月出版