茶箱
心にじんわり染み入る短編集
どんな過去でも、それは”今”を生きる力になっているのよ!
宮下奈都『遠くの声に耳を澄ませて』「アンデスの声」
【著者】宮下奈都
【出版社】新潮社
2017年東洋英和女学院中学部、栄東中学校の国語の入試問題として出題されました。
茶箱
宮下奈都さんの物語は、中学受験界では安定の人気ね
あらすじ・読みどころ
『遠くの声に耳を澄ませて』は12編の短編集
関係のない物語のようで、あちこちで登場人物が繋がるおもしろい短編集になっています。
人間だれもがもつ過去。
いい過去も、辛い過去も、忘れられない過去も、忘れていた過去も、それが今につながっているんだと感じる物語たち
今を生きる人たちへ贈る、前向きになれる物語たちです。
2017年東洋英和女学院中学入試(国語)を解いてみた
出題された短編「アンデスの声」あらすじ
祖父と祖母は同じ村の幼なじみでほとんど地元からでたことがない。
孫の私は、倒れた祖父を見舞うときに、祖父と祖母の過去の思い出を知る
自分が知らなかった祖父母に出会った気がするのだった。
茶箱
年をとったせいか、ちょっとしたことで涙腺がゆるむのよ
祖父母の若き頃の思い出が温かすぎてホロホロと涙がこぼれたわ
大人の私が解いてみてわかったこと
茶箱
問題文章は始めの祖父母について語られた部分を除いた物語のほぼ全部
祖父が倒れた連絡をもらう部分から始まり、物語の最期までが出題されているわ
文章量は長め。
おもしろい話ではないけれど、宮下さんらしい読みやすい文章。
● 久しぶりに訪れる祖父母の家や、久しぶりに祖父との会話から、自分が過去に見た風景や感情を読み解く
● 弱ってしまった祖父をきっかけに動き出す家族関係、娘(母親)目線、孫(私)目線で祖父母に対する気持ちの変化を理解しながら、読む力が必要
● 問題量が多いので問題を解くスピードも必要
茶箱
とっても心が温かくなるいい話なの でも受験中にはそんなこと思ってられないわよね
心を温めながらも、問題を集中して解いていかなくちゃならないわ
ちなみに涙腺がゆるめの私は、泣きながら問題を解くことになりそうです(笑)
緊急事態にならないと見えてこないことがある
人生ってなんだかむなしくなるわね
2017年栄東中学入試でも出題された
茶箱
短編「秋の転校生」が出題されたわ
出題されたのは、主人公の社会人の男性が、商談先の土地で、小学生の時に出会った女の子を思い出すシーンよ
● 過去の思い出を振り返りながら男性の小学生時代の気持ち、そして今そのことを思い出として感じている大人になった男性の気持ちを読み取ることが必要
● 「あなたの友達との関りで後悔していることを紹介してください」といった、ミニ作文みたいな問題あり
茶箱
大人になって思い出す男女の過去なんて、かなりいい風にアレンジされていることが多いわよねといやらしい大人の考えは捨てて、ピュアな気持ちで問題を解いたわ
人と違った言葉を話すのを恥ずかしいと思う女の子の気持ち、それを包み込んであげられなかった男の子の後悔にちかい「やっちまった」気持ちがわかれば解きやすい問題だと思うわ
宮下奈都『遠くの声に耳を澄ませて』 役立つちょこっとメモ
中学受験生におすすめ度 ★(満点★3つ)
短編「アンデスの声」「秋の転校生」は、中学受験生が問題なく読めます。
でも、この物語をグッと心に感じられるのは、大人になってからじゃないかな
『遠くの声に耳を澄ませて』は社会人におすすめ、大人向けの本です。
●フリガナ:難しい字のみあり
●本の長さ:10-278ページ(文庫本)
●初版:2009年3月
●作者の宮下奈都さんは1967年生まれ。
彼女の作品が中学入試で頻出されることは有名。
茶箱
宮下奈都さん『遠くの声に耳を澄ませて』、過去から繋がる今を感じる短編集だったわ
だれもが持っている過去、その過去にとらわれすぎては今を生きられないのよね
私も”今”をしっかり生きなくちゃと思ったわ
中学入試に出題されたから出会った小説だったけれど、大人の私の心を温かくしてくれた
読んでよかったわ~
この物語の良さは、大人になればなるほど強く感じられる気がするの
中学受験生には、まだまだ理解するのは難しいと思うわ
*読みどころや試験問題の感想は、あくまでも私個人の意見です。
続けて学ぶための本は?
宮下奈都さんの『よろこびの歌』がおすすめ
中学受験生が「読書って楽しい!」と思ってもらえる本だと思います。