茶箱
白黒の水墨画の物語なのに、読むほどに物語の世界がクリアに明るくなっていく不思議な感覚が味わえたわ
砥上裕將『線は、僕を描く』
【著者】砥上裕將
【出版社】講談社
2020年江戸川取手中学と三輪田学園中学の入試問題(国語)で出題されました。
あらすじ・読みどころ
主人公は大学1年生の霜介(そうすけ)
2年前に突然の交通事故で両親を亡くしてから生きる気力を失っている
霜介は大学で頼まれたバイト先で、偶然水墨画の巨匠篠田湖山と知り合い気に入られて内弟子になる。
さらに湖山の孫娘、千瑛と一年後の「湖山賞」を争うことになってしまう。
まったく未経験の水墨画の世界を知ることで、霜介はどんどん生きる気力を取り戻していく蘇生・成長物語だ
● 主人公の霜介(そうすけ)の気持ちの変化
● 大学の友達、水墨の師匠や兄姉弟子たちのキャラの濃さ
● 水墨画の世界がのぞける
2020年江戸川学園取手中学の入試問題(国語)を解いてみた
出題された部分は物語の中盤
霜介は大学で千瑛(ちあき)から水墨画を教わったあと、千瑛に家まで送ってもらい、二人で霜介の家で水墨画について語り合うシーン
● 文章問題量は普通
● 解答は選択式がほとんど
● 物語を細かく読まなくても、設問周辺の文章を読めば解答を導き出せる
➡逆に物語を読むと、千瑛は男なのか女性なのか?年齢は?と気になる点が出てきてしまった(笑)
*千瑛(ちあき)は女性で霜介と同じ年 霜介の師匠の孫娘で一年後に「湖山賞」を争うことになっている
● 問題は解きやすい
茶箱
今回から、本を読まずに先に入試問題を解いてみたわ!
物語はほとんど読まずとも、テンポよく解答できたわ
受験国語のコツがわかっている受験生ならカンタンにクリアできそうよ
2020年三輪田学園女子中学の入試問題(国語)を解いてみた
出題された部分は 物語の後半部分
①水墨画の師匠湖山が倒れたという連絡が入り病院へかけつけた霜介
病院での湖山と霜介二人の会話
②病院からの帰り、千瑛(ちあき)とだれもいなくなった霜介の実家(事故で両親を亡くすまで暮らしていた家)へ戻るシーン
千瑛と霜介二人の会話
● 文章問題量はかなり多め
➡物語に入りこめないと、読むのがつらいほどの量
● 解答は選択式・記述式 問題数20問
➡呆れるほど多いので、うんざりした 集中力を切らさずに頑張るのがポイント
● 物語をきちんと読んで解答する必要あり
➡霜介の気持ちが細かな描写や比喩で書かれているので、それを読み解くのがたいへん
● 大学1年生男子の霜介の突然両親を亡くした気持ち、そして彼の水墨画に向き合う気持ちがわかるかがポイント
➡中学受験生女子には、けっこう難しいと思う
茶箱
江戸川学園取手中の問題と比べて、解答にかなり手間取ったわ
気持ちがオブラードに包まれ、同じ意味の文章が違う表現で繰り返されたりする部分があり、そのあたりを読み解くのがたいへんだった
もうはっきり「うれしい」「つらい」「悲しい」「元気になった」とか書いてくれていてほしかった(笑)
砥上裕將『線は、僕を描く』役立つちょこっとメモ
中学受験生へのおすすめ度
★★(3点満点中)
高校生、大学生、大人向けの本かなと思う
中学受験生がこの文章から、細かく気持ちを読み解くのは難しいかな
●主人公:大学1年生の霜介(そうすけ)
●舞台:学校 師匠の家など
●フリガナほぼなし(難しい漢字のみあり)
●本の長さ:317ページ(単行本)
●初版:2019年7月
●『線は、僕を描く』は、2020年本屋大賞にノミネートされた
●作者の砥上裕將(とがみまさひろ)さんは1984年生まれ
水墨画家であり小説家
茶箱
砥上裕將『線は、僕を描く』は、両親の死に傷ついた青年が、水墨画によって新しい自分の生き方を見つけ成長・蘇生していく物語だったわ
白黒世界の水墨画の話しなのに、なぜか物語がすすむにつれて明るい色がついてくる小説なのよ
とっても不思議だったわ
大人としては、水墨画はそんなにかんたんに才能があふれ出すものなのか?と、リアル感が弱い面もあったけれど、水墨画への興味や芸術家のアートへに込めている気持ちが伝わる物語として、おもしろく読めたわよ
本を読み終わったら、水墨画が見たくなったわ
*読みどころや試験問題の感想は、あくまでも私個人の意見です。
続けて学ぶための本は?
『筆ペンで描く鳥獣戯画 』
水墨画は敷居が高いけれど、同じような筆ペンなら、カンタンに白黒の世界に挑戦できそう。