茶箱
ガゼルって何?架空の生き物なのかしらね
そんな疑問から始まる物語だったわ
津村記久子『サキの忘れ物』
【著者】津村記久子
【出版社】新潮社
2021年の難関私立中学校、麻布中学校の国語の入試問題として出題されました。
茶箱
麻布中学の問題はクセが強いわね
私なら問題用紙を見ただけで、机の上で泣きたくなるわ
あらすじ・読みどころ
『サキの忘れ物』は9編の短編集形式の本です。
ゲーム形式のような物語あり、名所案内になった物語あり、おもしろい形式の物語が入った短編集です。
短編「河川敷のガゼル」のあらすじ
Q町の河川敷に突然現れたガゼル
大学休学中の私は、「一人での仕事だから」とガゼルがいる河川敷の柵周辺の警備アルバイトをすることにする
ガゼル人気で浮足立つQ町の人々だったが、私はどこか他人事に思えていたが、そんな私が仲間意識をもったのが、ガゼルを見にくる少年だった
茶箱
「ガゼルってなにかしら?津村作品だものきっと不思議な架空の生きものよね~」と思いながらずっと物語を読み進めたわ
社会に適応していないと感じる大学生の私が、小学生の少年を「仲間だ」と直感的に感じるのがおもしろいわよね
人間って本能的に自分の仲間、自分とは相性の悪い人だというのがわかるのよ
ただ、その本能がずれちゃっているときもあるけれどね(笑)
ガゼル、私、少年は同じ仲間なのよね、きっと
*ちなみにガゼルは実在の生き物でした 無知で悲しいわ
● ガゼルを見守る私の淡々とした毎日
● ガゼルに興味を示す人々の自分勝手な思いの交差
● 自分を上手に表現できる人とできない人の違い
2021年麻布中学入試(国語)を解いてみた
茶箱
問題文章は物語の(始めの方にちかい)中盤から最後まで
ガゼルを見学する人たちやガゼル出現に浮足立つ世間を、ガゼル監視員として客観的に眺める私、そんな私が唯一気になっている(仲間だと感じる)少年、ガゼルをSNSに登場させる女性との関り合いについて書かれている
文章量は多め。
淡々とした文章、主人公のやる気のない性格も重なって、ワクワクして読む物語ではないです。
茶箱
問題文章の最後に、おまけのようにガゼルのイラストがポツンと描かれていたわ
できれば、最初に見たかったわね
大人の私が解いてみた!
● <語注>23個にびっくり 問題文章の最後にガゼルの絵あり
● 私の少年への思い(恋ではない!)、私の女性への思い、女性のガゼルへの思い、少年のガゼルへの思い、いろんな思いが入り乱れるのを読みとく必要がある
● ピュアな心だけではない大人(私も女性も)の考えを読み解く難しさがある
茶箱
感情の起伏、メリハリあるストーリー展開があるわけじゃなのよ
淡々とした物語を集中して読むのがたいへんだったわ
でもストーリーに浮き沈みがない分、登場人物の気持ちにも変化がないから、彼ら気持ちが一度読み取れれば、物語もラクチンに読みやすくなると思うわ
私と少年は似たタイプで、女性は真逆タイプ
3人とも、さわやかなピュア感はなし!
いちばんピュアなのはガゼルよ(笑)
津村記久子『サキの忘れ物』「河川敷のガゼル」 役立つちょこっとメモ
●主人公:私(大学休学中)ガゼルがいる河川敷の警備アルバイト中
●舞台:ガゼルがあらわれたQ町の河川敷
●フリガナ:なし
●本の長さ:138-159ページ(単行本)
●初版:2020年6月
●作者の津村記久子さんは1978年生まれ。
2008年には、「ぐだぐだ」の日常を支えるのはパンクロック!という高校3年生アザミが主人公の小説『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞。
2009年『ポトスライムの舟』で芥川賞を受賞しています。
その後も数々の賞を受賞している実力のある作家さんです。
茶箱
津村記久子さんの『サキの忘れ物』「河川敷のガゼル」は、大人でもなかなか歯ごたえのある物語だったわ
ちなみに『サキの忘れ物』では、表題にもなっている短編「サキの忘れ物」や「王国」は、子どもでも読みやすいと思うわよ(おもしろいかは別として)
私は「Sさんの再訪」がおもしろかったわ
このブログを書くにあたって驚いたのは、津村さんが思っていたよりもずっと若いってこと 今までおばあちゃんだと思っていたわ
*読みどころや試験問題の感想は、あくまでも私個人の意見です。
続けて学ぶための本は?
津村記久子さんの本
『エヴリシング・フロウズ』がおすすめ
どうでもいいようなくだらない悩みから深刻な悩みまで。少年少女の揺れる心、変わり続ける中学三年生の人間関係が書かれた物語です。