茶箱
望んだことじゃなくとも、自分のせいで誰かが傷つく
そして、そのことで自分も傷つく
大なり小なりだれもが感じたことのある心の痛みよね
『朔と新 』はとにかく登場人物それぞれの気持ちを丁寧に読み解くことが必要になる物語だったわ
いとうみく『朔と新 』
【著者】いとうみく
【出版社】講談社
2021年の難関私立中学校の、ラサール中学、栄光学園中学、浦和明の星中学、淑徳与野中学の国語の入試問題として出題されました。
茶箱
人気がある難関中学がこぞって出題した作品
あまりにも多くの学校で出たから、受験生にも衝撃が走ったわね
どんな本なのか読みたくて、本屋さんに駆け込んだお母さんお父さんも多かったかしら
あらすじ・読みどころ
朔(兄)と新(弟)は兄弟
物語は朔が盲学校から自宅に帰ってくるところから始まります
実は一昨年、二人が乗った高速バスが事故にあい、朔は失目してしまったのだ。
その事故にあった原因が自分にあると思い続けている弟の新は、久しぶりに兄と顔を合わせるのです
ぎこちなさがのこる兄弟、家族
そんななか、朔がブラインドマラソンに挑戦したい、新に伴走をお願いしたいと言い出した
▼作者のいとうみくさんのツイッター(2020年2月2日)
新刊のお知らせです! 『朔と新』(講談社)装画は加藤健介さん、装丁は坂川栄治さんと鳴田小夜子さんです。失明した兄と、その弟。兄はブラインドマラソンを始め、弟はその伴走者になります。近くて遠い兄弟の物語。今月4日刊行予定です。どうぞよろしくお願いします😊 pic.twitter.com/PRUq58wnJw
— いとうみく (@rxm07272) February 2, 2020
茶箱
兄弟、家族のなんとなくすれ違っちゃう、ぎこちなさ、はがゆさ
自分の主張を上手く伝えられない兄弟同士の
親から見ると思い通りにならない子ども
自分(子ども)を理解してくれない親
家族って近くて遠い存在だわと感じる時あるわよね
● お互いを思いやり遠慮しあう兄弟の思いの深さ
● 完璧な人間なんていない 困ったときにばれる人間の性
● 視覚障害について
①2021年ラサール中の入試問題(国語)を大人の私が解いてみた
茶箱
問題文章は物語の後半部分
ブラインドマラソンに出場してみたらという打診が入るが、マラソンで転んだりしてまた朔を傷つけてしまうことが怖い新
そんな新の気持ちを理解している朔が、事故の際に朔に起こった出来事や、自分が立ち直るきっかけになった出来事が語られるシーン
ちなみにこの部分は、私が号泣した場面よ
受験生の中でも試験中にグッときちゃった子がいるかもしれないわね
文章量は多め。
でも物語に入りこんでしまうはずなので長さは感じないはず。
● 朔と新の両方の気持ちを読み解く必要がある
● 記述式で「説明しなさい」が多く80字以内、90字以内、130字以内と文字量も多いので細かな説明が必要になる
● 盲目になった兄と、その原因が自分と考える弟が互いの本音をぶつけあうシーンの雰囲気を読み解く
茶箱
盲目になった兄のこれから必死に生きていく覚悟
未だに事故によって盲目になった兄を受け入れられない弟の弱さとやさしさ
ふたりの気持ちはよくわかると思うのよ
でもそこから、二人の気持ちを試験時間中に文字にして表すのが難しいのよね
②2021年栄光学園中の入試問題(国語)を大人の私が解いてみた
茶箱
問題文章は物語の前半部分
朔が、失目する前から仲のいい女の子の梓と初めて電車に乗って新宿へ出かける
そして、弟の新とブラインドマラソンに挑戦したいことを、ブラインドマラソンの伴奏者をしている男性に相談をするシーン
女の子が登場するだけで、朔の不安や緊張した思いが和らぐ感じもあるわよ
梓ちゃんの盲目になった朔への気持ちを問う問題もあったわ
視覚障害を持つ人との生活・付き合い方も出題されているわよ
③2021年浦和明の星中の入試問題(国語)を大人の私が解いてみた
茶箱
問題文章は”家族”に焦点が当たった部分が出題されていたわ
①母親と新のぶつかり合う部分
「母親と相性が悪い」と思っている新の言葉には衝撃を受けたわ!
兄弟の母親は、さわやかな物語のなかで、どちらかというと”いやらしい”女性なのよね
②物語の最後の部分、朔と新の気持ちをぶつけ合うシーン
家族あるある、それぞれ(朔も新も母も)の言葉で言い表さない、気持ちを読み取る力が必要とされるわ
母親をちょっと理解したかもと思う新、言い合えない本音を言い合える兄弟を、うらやましく思う人もいるはずよ
3つの難関私立中学の入試問題(国語)を解いた結果
茶箱
3つの中学入試問題を解いたところ、それぞれ問題にしているテーマが違っていたわ
●ラサール中
兄弟関係
大事故でお互いに傷ついた兄弟だからこその想いの強さ
●栄光学園中
視覚障害
視覚障害の人の気持ち・生活を知る
●浦和明の星中
家族関係
母と息子(弟)の関係・兄弟同士の本音の言い合い
茶箱
3つの中学とも問題文章の量、問題の数はかなり多め。
物語は読みやすいので、集中力を切らさずに問題を解き切ることが必要だと思うわ
いとうみく『朔と新 』 役立つちょこっとメモ
●主人公:朔19歳(一昨年の事故により盲目に) 新は高校一年生(期待されていた陸上をやめてしまっている)
●舞台:家ほか
●フリガナ:難しい言葉だけあり
●本の長さ:287ページ(単行本)
●初版:2020年2月
●作者のいとうみくさんは1970年生まれ。
2012年『糸子の体重計』で第46回日本児童文学者協会新人賞、2014年『空へ』で第39回日本児童文芸家協会賞を受賞。
2020年、『朔(さく)と新(あき)』で野間児童文芸賞受賞しました。
嬉しいご報告です㊗️『朔と新』で野間児童文芸賞をいただきました!今年はコロナで気持ちがふさぐことが多かったのですが、ひっくり返るくらい驚き、嬉しいです。季節風同人のみなさま、beのみなさま、読者のみなさま、編集者のみなさまに感謝でいっぱいです。ありがとうございました‼️ pic.twitter.com/0XoU5uWmwA
— いとうみく (@rxm07272) November 2, 2020
茶箱
いとうみくさんの『朔と新 』は、兄弟、家族それぞれの気持ちがいりみだれる物語だったわ
大人だって、子どもだって、強い人間、完璧な人間なんていない
弱い面や、いやらしい心、自分勝手ないやらしい面をもっている
盲目になった少年の再生・成長物語ではない、人間の性がみえる物語なのよ
大人も読みごたえのある一冊だったわ
*読みどころや試験問題の感想は、あくまでも私個人の意見です。
続けて学ぶための本は?
いとうみくさんの本『羊の告解』がおすすめ
「羊の告解」 いとうみく
— 茶箱 (@pooh70inu) September 4, 2020
突然、父が殺人者として逮捕されてしまう‼️
ショッキングなストーリー
殺人者の父、その息子たち、妻であり息子の母。さらに息子たちの祖父母、息子たちの友達
あらゆる人たちの立場から、感情移入をして読めた
児童書だが、あらゆる世代にオススメしたい本#読書 pic.twitter.com/rLvAV0574B