本『楽と萩』
「友情とは何か」を考えたい時。
もの(アイディア)を生み出すことに苦労している人へ。
おすすめしたい本です。
この本は、初めは楽焼と萩焼の特徴・違いを紹介するだけの本かと思っていたのですが、まったく違いました。
楽焼15代目楽吉左衛門(らくきちざえもん)さんと,萩焼の15代目板倉新兵衛(さかくらしんべい)さんが、お互いの工房へ出向いて、お互いの家族ともふれあいながら、楽さんは萩焼を、板倉さんは楽焼に挑戦するというおもしろい企画の本です。
ふたつの焼物の大きなちがいは、楽焼は「手捏ね・削り」萩焼は「蹴轆轤(けろくろ)」を使って茶碗をつくることです。同じ茶碗をつくるといっても、まったく違うものをつくるような感覚です。これには、お二人とも苦労したようです。
なぜ、このような企画が始まったかというと。
二人はもともと旧知の仲だったことから始まります。二人は大学生の同級生で、学生時代にはヨーロッパで旅行をしたような仲です。
そして、二人には生まれた環境がとてもよく似ています。二人とも、生まれながらにその陶芸一家の道を進まなければならなかったことです。
本の中には、二人の思い出がにじみ出た学生時代の写真がたくさんあります。写真には、今のお二人に繋がる無邪気な青年が写っています。
それにしても、若いころのお二人の写真とそれぞれの息子さんたちがそっくりなのが笑えます。
親子ですね~。
作品の制作過程では、お二人とも作品に対して、お互いにライバル心がなんとなく見えるのが男らしくてかっこよかったです。
二人でいると、すぐに学生時代の頃に戻ることができる関係だということが本を通して伝わってきます。友情とは、いつも連絡をとって近況を知らせあったりすることや、考えが似た者同士で成り立つもの、ということだけではないことを改めて感じさせてくれる一冊です。
友情って、お互いを尊敬しあってこそ成り立たつものだと感じました。
ステキなフレーズ
作品は作り手を映すと言われるとおりだとつくづく思う2人。(中略)いつまでもこだわられる楽氏とご自身の仕事を休んでも面度見のよい板倉氏。昔からきっとこのかんじだったのだろうと合点がいく。
板倉氏の工房で二人が茶碗制作の作業をしている、ある日の風景の写真についた説明文の一部です。
お二人の学生時代の写真を見て話しを読んだ後だと、二人の関係が何十年経っても変わっていない(変わらなくていい関係)なんだと嬉しくなります。
まとめ
①お二人の息子さんもなんとわずか2歳ちがい。二人の長男とも焼き物の道にすすんでいくことを決心してくれています。彼らが今度は、自分から子へ伝承という立場になってきたという現状になり、この一家の未来も見てみたいな~と思わせてくれること。
この本には多くの写真があるのですが、楽氏が板倉氏の長男と、板倉氏が楽氏の長男と茶碗制作を行っている写真が私の中でベストショットです
②普段は一人で工房にこもっての戦いという職人の世界を感じられること。
③二人の作品が多く見られること。