確かにわたしは目が見えないけれど、世界が美しいと感じることはできる。個の世界には、まだまだ美しいものがたくさん息を潜めている。
(p.247)
▶▶視覚障害者のとわの想い
『とわの庭』
【著者】小川糸
【出版社】新潮社
茶箱
とわの見えなくても美しさを感じられる力、自分の運命を受け入れて前向きに生きる力に感動したわ
あらすじ・感想
とわは視覚障がい者、母親とふたり暮らし
母親以外は、毎日朝を教えてくれる庭にやってくる鳥たち”黒歌鳥合唱団”の歌声と、水曜日に荷物を届けてくれるオットさんが、とわの生活のすべてだ。
「母さんは、私の太陽だ」と思っていたのに。
とわの10歳の誕生日、写真館で母とふたりで写真をとった後、突然母親は姿を消してしまう。
彼女は最初から最後まで自分を不幸だと思わないし、母親を憎むこともないし、自分とだれかを比べることもない。
ただ、自分の運命を当たり前のように素直に受け入れている。
どうしたら、こんな感情をもてるのだろうかと不思議だ。
小さい頃に極端に人と接する機会がなかったからなんだろうか
人と関わらなければ、人がもってしまう嫌な気持ちも生まれないのかと思うと、なんだか人間ってやるせないなと思う。
とわは目がみえない分、感覚が研ぎ澄まされている
目に見えるものだけで、判断することはもちろんない(できない)。
香りや、音、感触、思い出を積み上げて、ステキな自分の世界を作り上げている。
ピュアな心をもつ、とわの世界を感じられる物語だ。
そして、とわのどんな問題があろうとも自分の人生を受け入れ、前向きに生きる力に、私は励まされた。
「とわの庭」小川糸
— 茶箱 ℂℍ𝔸𝔹𝔸ℂ𝕆 本とお菓子を愛する (@pooh70inu) 2021年6月28日
視覚障害の少女が母親に捨てられた後、社会や回りの人に助けられ自立していく物語
リアル感がない部分もあるけれど物語にどっぷり浸れる 捨てられても体中に残る母親の愛に揺るぎはない 母親を憎むこともなくピュアに生きる姿が汚れきった大人の心に染み入る#読書 #読了 pic.twitter.com/y68Zxh3yRW
印象に残った言葉
● 母とふた暮らしの視覚障害者とわの想い
わたしの暮らしには、母さんの愛があふれている。
(p.13)
● とわと友達になったマリさんの言葉(認知症になった母親の面倒をみている)
これでもうわたしはこの人に支配されないんだ、今はわたしがこの人を支配しているんだ、っていう妙な安堵と優越感があって
(p.216)
母と娘の関係
お互いにわかっていながら、わからないことが多いし、自分勝手に愛情を注いだり、愛情を重く感じたりすることもある。
いい時も悪い時もある。
途中二人の絆がプツンと切れちゃっても、へその緒で結ばれていた関係だからか、なんだかんだ心の奥底から憎みきれないものなんだとつくづく感じる。
茶箱
ふと自分が母親に似ている思って、クスリとひとりで笑っちゃうことってあるよ
次に読みたいおすすめ本
『奇跡の人』
明治20年日本
アメリカ留学帰りの去場安(さりばあん)は「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女」の教育係として青森県弘前の名家に向かい、その少女、介良れん(けられん)に出会った。
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