2022年4月15日更新
茶箱
吉田篤弘【月舟町三部作シリーズ(番外編あり)】は、出版社も違うし、表紙の雰囲気もまったく違う本なの 知らないとシリーズ本だと気づかないわね
知らないともったいない!
読み逃しがないように【月舟町三部作シリーズ(番外編あり)】を紹介します
2022年4月、月舟町シリーズとして新しい本が刊行されました。
覚えていますか?月舟町の面々を!
リツ君、映画館の看板犬ジャンゴ、古本屋の「デニーロの親方」、イルクーツクに行きたい果物屋主人、背の高い舞台女優・奈々津さんなどなど。
彼らを訪ねて作者の吉田さんが語り合うというおもしろい設定の本です。
吉田篤弘【月舟町三部作シリーズ】おすすめの読む順番は?
鉄板の読み方としては、本が出版された順番で読むを選ぶ
①つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)
②それからはスープのことばかり考えて暮らした(中公文庫)
③レインコートを着た犬(中公文庫)
④つむじ風食堂と僕 (ちくまプリマー新書)
私的には、別の読み物として2冊ずつセットで読むのをおすすめ
舞台になっている町や、登場人物を考えるとおすすめの読む順番
①つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)
②レインコートを着た犬(中公文庫)
③それからはスープのことばかり考えて暮らした(中公文庫)
④つむじ風食堂と僕 (ちくまプリマー新書)
①と②、③と④は別物語として読んでも、物語として成り立ちます
それぞれ一冊ずつ読んでも、問題なく読みきれます。
私は始めに読んだのが『それからはスープのことばかり考えて暮らした』だったわ
もし『つむじ風食堂の夜』を一番初めに読んでいたら、シリーズ全部読まなかったと思うわ(笑)
1作目『つむじ風食堂の夜』
あらすじ・読みどころ
その食堂の皿は本当に美しかった
月舟町にある、だれもが「懐かしい」と感じる「つむじ風食堂」。
(古臭いではない!懐かしいだ)
そこには無口な店主、月舟アパートメントに住んでいる「雨降り先生」、古本屋の「デニーロの親方」、イルクーツクに行きたい果物屋主人、不思議な帽子屋・桜田さん、背の高い舞台女優・奈々津さんといった、月舟町の住民たちが集まる。
町の食堂に集まる、どこか不思議な人たちが繰り広げる童話のような物語。
月舟町って、異国の小さな町のような、どこか不思議な町なの
いつのまにか、自分もつむじ風食堂で月舟町のみんなと名物料理クロケット(コロッケ)を食べている気分になれるわよ
楽しく読むアドバイス
独特の物語の雰囲気に、馴染めないとここで【月舟町三部作シリーズ】を読み終えてしまうかもしれません(笑)
でも、あきらめないで次を読んで!
どんどん【月舟町】の魅力がわかるようになってきます。
2作目『それからはスープのことばかり考えて暮らした』
あらすじ・読みどころ
月舟町の隣町、桜川に越して来た青年オーリィ君(大里くん)は、サンドイッチ店「トロワ」で働き始める。
サンドイッチ店の店主安藤さんと息子のリツ君(小学4年生)や、住んでいるアパート大家さんのマダムとの、ほど良いふれあいが心地いい日々を送っていた。
そんなオーリィ―くんは、隣町の映画館「月舟シネマ」で見た映画の中の女優アオイさんに恋をしてしまう。
またまた、なんだか不思議な物語が始まる。
安藤さんのつくる人気のサンドイッチと、オーリィくんがつくる”思い出”と”今”を結び付けてくれる名前のないスープが、食欲を刺激するわ
知らないあいだにたくさんの時間が流れてしまったーような気分になる。
ときどき、自分が正しい時間の流れから切り離されているーような気がする。
(P.253)
ゆっくり流れているように感じたり、あっという間に過ぎていたり、ずっと昔と繋がったり、ずっと先がみえたり、時間って不思議よね
マダム、オーリィくん、安藤さん、リツ君、アオイさん、年齢の違う人たちの考え方の違いも、時間が作りあげているのかもしれないな
楽しく読むアドバイス
あれ?これ【月舟町三部作シリーズ】なのかしらと思った人もいるはず。
ええ、間違ってませんよ(笑)
私的には、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』が一番好き
3作目『レインコートを着た犬』
あらすじ・読みどころ
舞台が月舟町に戻ってきて、第1作目で登場した懐かしの月舟町の住民たちがぞくぞくと登場します。
今回の主役は「月舟シネマ」のオーナー直さんが飼う、映画館の看板犬ジャンゴ
密かに「笑顔」を人に伝えたいと思い、自分はレインコートは必要ない”タフ”な犬と思っているジャンゴ。
そんなジャンゴの住む月舟町では、人の数だけ事件や問題が起こる。
雨が似合う、おだやかな町、月舟町は今までどおりではいられないのだろうか?
犬が主役なのに、今までの、のんびり不思議な世界よりも、現実感が一番ある物語。
(それも不思議だけどね)
有難いものを、人はほどなくして当たり前なものに変えてしまうんだよ
(p.51)
どんなに居心地のいい場所でも、変わらないと思ってた場所も、ふと気づくと変わっていることってあるわ
それは場所が変化しているのではなく、自分が変化しているのかもしれないわね
楽しく読むアドバイス
第一作目『つむじ風食堂の夜』の登場人物たちが当たり前のように登場してくるので、事前に人物を復習しておくとよりスムーズに「月舟町」の世界を楽しめます。
番外編『つむじ風食堂と僕』
あらすじ・読みどころ
主人公は12歳の律君
第2作目で登場したサンドイッチ店を営む父安藤さんの息子です。
大きなメガネをかけた少年は少し大人びていて、自分の「むかし」を考え、未来を考えている。
彼は隣町にある「つむじ風食堂」に一人で食事をしに出掛け、そこで大人のお客さんに「仕事はなんですか?」と尋ねるのだ。
生きていくことは、毎日、少しづつ、「むかし」をつくってゆくことなんだと思う。
(p.10)
茶箱
リツ君の自分の頭で自分サイズに合わせて物事を考える力は、大人の私も見習いたいわ
楽しく読むアドバイス
第2作目『それからはスープのことばかり考えて暮らした』時小学校4年生だったリツ君は12歳になり、ちょっと大人になっています。
登場人物がかぶる、2作目と続けて読むとわかりやすいです。
この物語は、中学入試でも出題されました。
(2016年、東邦大学付属東邦中学、和洋国府台女子の入試問題(国語)で出題)
吉田篤弘【月舟町つむじ風食堂シリーズ】を紹介しました。
【月舟町三部作シリーズ】は3作品に番外編一冊を加えて4冊になります。
町や登場人物が違う物語にシリーズなのかしら?と思ってしまいますが、どの物語もどこか懐かしく、不思議で、人とのつながりのあたたかさを感じる物語です。
茶箱
夜にのんびりと読みたくなる、大人の童話みたいなステキな物語よ