実際に生きていた人たちの物語にはパワーがあります。
なぜなら、その人たちが懸命に生きてきた事実があるからです。
彼らの生き方に魅せられた小説家たちは、物語として【実在の人物】をよみがえらせています。
茶箱
【実在人物の物語】読みやすい、歴史本としても楽しめるおすすめ本12冊を紹介します
紹介した本は目次の「13.【実物人物の物語】まとめ」から一気にみられます。
- 『らんたん』
- 『あちらにいる鬼』
- 『廉太郎ノオト』
- 『白光』
- 『地中の星』
- 『美しき愚かものたちのタブロー』
- 『白蓮れんれん』
- 『マリーアントワネットの日記 Rose・Bleu』
- 『天地明察』
- 『小説伊勢物語 業平』
- 『額田女王』
- 『ボタニカ』
- 【実在人物の物語】読みやすい歴史本としても楽しめるおすすめ本12冊まとめ
『らんたん』
【著者】柚木麻子
【出版社】小学館
恵泉女学園の創始者、河井道の生涯を書いた物語。
登場人物は豪華なので、読んでいて楽しい!
教科書で学んだ歴史上の人物がどんどん出てきます。しかも、彼らは一癖も二癖もある人ばかり(笑)
津田梅子と大山捨松との不器用な関係
女性への差別発言をくりかえす徳富蘆花
有島武郎のナルシストぶり
野口英世のダメ男ぶり
伊藤博文の女にだらしない面
自分の意見を高らかに発言する平塚雷鳥
女性のたくましさや未来へつきすすむ勇気が書かれている一方で、男性たちのダメダメ度数が高い物語です。
私たちはぜったいにこの時代に戻ってはいけない!
「女性に人間としての地位、男性と同じ地位を認めるのが当然」という今では当たり前の考え方(現在も変わらないなと感じることもありますが)は、この時代に彼女たちが懸命にがんばってくれたからなんです。
茶箱
次の世代の女性たちに誇れるような生き方をしたいと思ったわ
『あちらにいる鬼』
【著者】井上荒野
【出版社】朝日出版社
衝撃的な三角関係が描かれた物語です。
まず作者は井上荒野さん。
彼女のお父さまは作家の井上光晴さん、もちろんお母さまもいます。
そして、お父さんの不倫相手はあの瀬戸内寂聴さん。
お父さんと瀬戸内さん、そしてお母さんの三角関係が小説になっています。
(作中では名前は異なっています)
瀬戸内さんが亡くなる前に「傑作!」と認めた作品。
瀬戸内さんがたくさんの恋に生きながらも、井上さんと別れた後に出家を決断した理由はなんだったのかを考えてしまいました。
茶箱
愛って、恋って、結婚って何なんだろうかと思っちゃいます
『廉太郎ノオト』
【著者】谷津矢車
【出版社】中央公論社
音楽の教科書でお馴染み、丸眼鏡の滝廉太郎の物語です。
滝廉太郎って、とっても短命だったのを知っていますか?
音楽を愛し、音楽で生きることに精一杯だった滝廉太郎の青春時代を中心に書かれた小説です。
才能のある女性に憧れと嫉妬をする気持ち、好きな音楽の道を歩むために必死になる、日本に音楽をひろげたい気持ち。
滝廉太郎の純粋な心が伝わってくる物語です。
茶箱
もっと長く生きて、もっともっと音楽を楽しんでほしかったわ
『白光』
【著者】朝井まかて
【出版社】文芸春秋社
大正時代にロシアにわたって宗教画を学んだ山下リンの物語です。
あの時代に女性がひとりでロシアに留学ってスゴイ!ですよね。
しかもけっこう山下リンという女性は”我”が強くて、頑固だし、絵にのめり込むタイプで、ワガママな女性です
そこがまた、人間味あふれていて物語をおもしろくさせます。
生きる道に悩んだときに、山下リンのように自分らしさをとことん追求し生きていく道を選ぶのもひとつです。
茶箱
リンも年を取るごとにいろんなことに気づき、人間が丸くなっていきます
若さゆえの間違いにも気づくリン
人間っていつまでも同じではないのよ
『地中の星』
【著者】門井慶喜
【出版社】新潮社
東京の地下にはりめぐらされた地下鉄。
地下鉄っていつ東京に誕生したのか知ってますか?
日本の地下鉄の生みの親、早川徳次の物語が『地中の星』です。
”初めてのこと”を成し遂げたいと思う徳次。
地下鉄に興味をもってから、地上調査や建設の根回しから始まって、日本初の地下鉄(銀座線)の工事に着手します。
最初からスムーズにいくはずもなく、工事現場での事故や資金ぐり、他鉄道との争いなどなど、問題はあとからあとからわいてきます。
浅草から始まり、上野、神田、新橋と繋がってきた地下鉄に、東急王国の五島慶太が立ちはだかる局面は、物語のなかでも一番のピンチ!
年をとったからか、五島との争いに頑固になっている徳次。
完璧な人間ではない徳次の姿が書かれているからこそ、物語の面白さが引き立ちます。
茶箱
五島慶太も魅力的な人物よ
『美しき愚かものたちのタブロー』
【著者】原田マハ
【出版社】文芸春秋社
「いつか日本に西洋絵画を集めた美術館をつくりたい」と願い、ヨーロッパで東京の国立西洋美術館の基礎となる数千点もの作品を買い集めた実業家の松方幸次郎(1866-1950)の物語です。
日本の敗戦後、松方コレクションはフランス政府に接収されてしまうのですが、松方コレクションの寄贈返還をフランスから勝ち取った吉田茂の強い意志と交渉力も、この本の読みどころです。
日本人に西洋画のすばらしさを知ってほしいと願った松方、西洋画に魅せられた松方、松方の熱意にあふれた一冊です。
なにかを成し遂げるパワーってすごいです。
にしても、フランス政府の自国の宝を簡単に手放さない意地は、日本も世界の各国とネゴシエーションするときには見習った方がいいかもしれないと思いました。
茶箱
松方さん、ルノワールの傑作を東京で見られる機会を与えてくれてありがとう!
『白蓮れんれん』
【著者】林真理子
【出版社】集英社
いちばん最初に紹介した『らんたん』にも登場する柳原白蓮(1885-1967)の物語。
父は柳原前光伯爵、大正天皇の生母である柳原愛子の姪で、大正天皇の従妹にあたるという柳原白蓮。
彼女の恋愛スキャンダルは、当時の日本で大騒動となりました。
女のくせに男に従わないなんて
女のくせに恋や愛だなんと騒ぐなんて
女のくせに自由を求めるなんて
本から、当時(いや現在も?)の男性たちの罵声が聞こえてくるようです(笑)
ふたりの恋は本物だったのか?そもそも恋に本物などあるのだろうか?
幸せとは何なのか?自分らしく生きるのは難しいのか?家族と自分どちらが大事なのか?
女性たちが悩むことは今でも同じですね。
林真理子さんの読みやすい文章のパワーで、事件ともいわれた白蓮の恋模様に魅せられてしまう一冊です。
茶箱
朝ドラ「花子とアン」に登場した白蓮さん
新しい女性の生き方を貫いた人でした
『マリーアントワネットの日記 Rose・Bleu』
【著者】吉川トリコ
【出版社】新潮社
フランス王室のなかで、いや世界の王室のなかでもっとも有名な女性といえばマリーアントワネットではないでしょうか?
オーストリアに生まれ、政治の駒としてフランスに嫁ぐ運命をもち、華やかな王妃時代、フランス革命により公衆の目の前でギロチンにかけられた最期、ドラマチックな生涯を送った女性です。
わがままで、お金を湯水のように使い、贅沢三昧で暮らしたイメージが強いマリーアントワネットですが、ほんとうの彼女はどんな女性だったのでしょうか?
この本は、マリーアントワネットが書く日記という形式で、彼女の本心を書きだそうと試みている本です。(RedとBlueの2巻セットです)
Redは幼少期からフランスに嫁ぎ皇太子妃時代、Blueから王妃時代が始まります。
だれかの日記を読むのは、秘密をのぞくようでワクワクします。
マリー・アントワネットの心の内や、当時の彼女の周りの環境、ルイ16世との関係などがみえてきます。
唯一残念なのは、日記の文章が口語的でかなり現代風の若者言葉を乱用しているからか、その言葉つかいがわかりにくい!
(逆に若い人たちのなかには読みやすいと思う人もいるかもしれませんが)
「長い間読み継がれてほしいのにな」
せっかくわかりやすい設定で、歴史上の人物に迫っているのにもったいないなと思いました。
茶箱
雰囲気は華やかだけど、ドラマの内容は携帯電話が無いからか、とにかくすれ違いが多い恋愛なのよ
それがまたドラマを盛り上げるの!
『天地明察』
【著者】冲方 丁
【出版社】KADOKAWA
江戸、四代将軍家綱の御代。
日本独自の太陰暦を作り上げた数学者・渋川春海(安井算哲)の20年にもわたる物語です。
北極星の位置を観測する日本中をめぐる旅「北極出地」では、渋川春海は人生を左右する人たちと出会いながら、さまざまな経験をしていきます。
渋川春海はその後「改暦(日本独自の暦をつくる)」の仕事を賜りますが、この仕事ではたくさんの挫折や悲しい別れを経験します。
辛い状況をを乗り越え、とことん「改暦」の仕事に精進しつづける晴海の姿は魅力的です。
関孝和や、保科正之、水戸光圀といった歴史上の人物も登場しますよ。
『天地明察』は映画化されていて、今や夫婦になった岡田准一さんと宮﨑あおいさんが共演しています。
茶箱
当時の歴史上の人物が、本の中からよみがえったように感じられる小説よ
『小説伊勢物語 業平』
【著者】髙樹 のぶ子
【出版社】日本経済新聞社
「伊勢物語」の作者であり、女性にもてまくった(「源氏物語」の光源氏のモデルともいわれる)という在原業平の人生を小説にした物語。
平安時代の美しさ、日本語の美しさを思う存分感じられます。
帝に入内予定の女性へアタックしたり、都落ちしても女性関係は怠らず、都に帰ってくれば伊勢斎宮をターゲットにする、業平は女性に対してはアグレッシブな男。
血筋が妙に良いために、政治上で活躍できない男だからこその生活なのです。
業平の和歌のステキさを読めば、モテモテなのも仕方ないと納得してしまいます。
茶箱
女性中心といえども、業平なりに一生懸命生きた人生だったのよね~
『額田女王』
【著者】井上靖
【出版社】新潮社
平安時代からさらに時代はさかのぼり、舞台は飛鳥時代の物語が『額田女王』です。
大化の改心から5年後。
兄の中大兄皇子(38代目天智天皇)と大海人皇子(40代目天武天皇)と、絶世の美女といわれた額田女王を中心に物語は進みます。
井上靖さんの小説では、神につかえる身である額田女王の苦悩をもちながらも凛とした姿勢を貫くのですが。
やっぱり三人の男女関係の行方に興味津々になりますね。
万葉集の歌をはさみながら政局の状況も描かれ、男女の関係だけでなく、飛鳥時代を生きた男たちの生きざまも楽しめる歴史スペクタクル小説です。
茶箱
ふたりの皇子に愛されるなんてすごいわね~
ウィリアム王子とヘンリー王子からアタックされるってことよね
『ボタニカ』
【著者】朝井まかて
【出版社】祥伝社
最後に、2023年春のNHK朝ドラマ「らんまん」の主人公になる、日本植物学の父、牧野富太郎の人生を描いた物語です。
作者は、『白光』を書いた朝井まかてさんです。
植物オタクの牧野さんの生き方は、お金にも女にもちょっと緩くないかしら?と思ってしまうほど。
尋常ではないといえば尋常じゃないけれど、なにかを成し遂げる人の熱意はこれくらいが当たり前なんですよね(笑)
ちなみに牧野博士は造り酒屋のお坊ちゃまで、若い頃はイケメンだったそうですよ
茶箱
パーフェクトな神のような人間じゃないからこそ、人に愛されるチャーミングさがあるのかしらね
【実在人物の物語】読みやすい歴史本としても楽しめるおすすめ本12冊まとめ
読みやすい歴史本としても楽しめるおすすめ【実在人物】物語はいかがでしたか?
実際に自分のポリシーをもってパワフルに生きた人たちの物語をぜひ読んでみてください。
パワーをもらえますよ。
●『らんたん』
恵泉女学園の創始者、河井道の物語
●『あちらにいる鬼』
瀬戸内寂聴と不倫相手の井上、その妻との三角関係の物語(作者は井上夫婦の娘)
●『廉太郎ノオト』
滝廉太郎の物語
●『白光』
宗教画家、山下リンの物語
●『地中の星』
東京に地下鉄を誕生させた早川徳次の物語
●『美しき愚かものたちのタブロー』
国立西洋美術館の基礎をつくった実業家の松方幸次郎(1866-1950)の生涯を書いた作品
●『白蓮れんれん』
自分らしい生き方を貫いた女性歌人、柳原白蓮の物語
●『天地明察』
江戸時代の日本独自の暦をつくった渋川春海の物語
●『マリー・アントワネットの日記 Rose』
フランス王妃マリー・アントワネットの物語
●『小説伊勢物語 業平』
「伊勢物語」の主人公とされる在原業平の一代記
●『額田女王』
天智・天武両天皇から愛された額田女王の物語
●『ボタニカ』
日本植物学の父・牧野富太郎の物語
茶箱
気になる本を読んでみてね!