茶箱
「越えられないかも」と絶望するくらい【壁にぶちあったとき読みたい本】を紹介するわ
自分ばっかりが、人生の壁にあたってばかりいるように感じるときってあります。
そんなとき、じっと我慢していますか?がむしゃらに抜け出そうとしますか?
本の世界でも、たくさんの主人公たちが大きな壁にぶつかっては悩み苦しみます。
そんな彼らは壁をどうやって乗り越えたのかを知りたくありませんか?
ひとりで悶々と悩み苦しむ前に、本の主人公たちと一緒に壁をのりこえてみませんか?
『透明な耳』
【著者】村本大志
【出版社】双葉社
【出版年】2020年12月
今まで自分と違う自分になってしまった人
突然の事故で耳が聞こえなくなった17歳の由香ちゃん。
彼女が自暴自棄になっても、家族も友達も彼氏は決して彼女を見捨てません。
辛いのは彼女自身。
だけど、彼女が前向きにならなくちゃどうにもならない。
家族も友達、そして専門家の人たちが、全力で彼女の壁にぶつかっていく姿勢は、彼女の孤独の世界に引きこもってしまった心をどんどん溶かしていきます。
由香ちゃんが壁を打ち破り成長する姿は、困難を自分ひとりで乗り越えられないと思ったら、家族、友達、専門家などなど、頼れるものはなんでも頼らなくちゃいけないと気づかせてくれます。
茶箱
恥ずかしいとか、迷惑になるとか考えなくてもいいから、手を差し伸べてくれる人には感謝の気持ちをもって甘える勇気をもとうと思ったわ
逆に、弱っている自分にへんに近寄ってくる人には注意が必要ですけれどね。
壁を乗り越えるポイント
● 絶望から救ってくれる人を手放すな
● 信頼できる人には甘える勇気をもとう
『こんぱるいろ、彼方』
【著者】椰月美智子
【出版社】小学館
【出版年】2020年5月
今まで自分が疑うことなく信じてきたものに裏切られた人
自分の母親が日本人じゃなかった!衝撃的な真実を知った大学生の奈月ちゃん
奈月ちゃんは今まで教えてくれなかった母親にたいして怒りがこみ上げ、今まで言えなかった母親の葛藤や、ボートピープルとしてベトナムから日本へ逃げてきた母親一家がもっていた苦しみを想像してあげることすらできません。
でも、奈月ちゃんは母親の母国ベトナムを訪れ、自分のルーツであるベトナムについて知るにつれ、自分のもつ”常識”について自問するようになります。
茶箱
人の苦しさを知ろうとすれば、自分の考えは頭のなかで大きくなっている”常識”にとらわれていないかを知るきっかけにもなるわよ
お母さんから「今まで秘密にしていたことがある」と言われたらドキドキですよね。
奈月ちゃんがはじめはその秘密を受け入れられなかったのもわかります。
でも彼女はその秘密に負けてしまうわけではなく、自分なりの方法でその秘密の壁をぶち壊します。
なんて頼もしい子なんだろう。
自分で同じように苦しまないと、他の人の苦しさを共感したり想像するのは難しいのですが、でも理解しようとする気持ちはもっていたいですよね。
壁を乗り越えるポイント
● それは裏切りの壁なのか?優しさの壁なのか?いまいちど考えてみよう
● 自分の考え方は、自分のつくった”常識”にとらわれていないだろうか
『オリオンの上』
【著者】有島希音
【出版社】文研出版
【出版年】2021年6月
自分の生きる価値すら見失いかけるほどの、自分ではどうにもならない壁
自分自身では解決できない壁にぶつかることもあります。
特に経済的に自立できない子どもの場合、家庭や家族、学校に関わる大きな壁が目の前にそびえたってしまうと、どうにもなりません。
『オリオン座』の主人公、中学1年の麻由子ちゃんは、父親のウワサのせいで家庭でも学校でも、どうしていいかわからない状況に追い込まれてしまいます。
人ってどうして生まれてくれるのだろう……。誰かを傷つけるために生まれてくるのだろうか?
▶麻由子ちゃんの言葉【p.126】
自分にはなんの非も罪もないのに、どうしてこんなに苦しい思いをしなくちゃならないの?、自分には生きている意味があるのだろうか?と彼女は思いつめてしまいます。
そんな彼女には救世主が現れます。(よかった!)
それは、それまで頼りにもしていなかった部活の顧問サヒメ先生でした。そしてもう一人、頼りないと思っていた幼なじみの男の子です。
意外な人が、どうにもならない壁から守ってくれることがあります。
意外な人が、自分と同じように辛い思いをしていることがあります。
が、この本では、うまい具合に壁をぶち破れましたが、現実では壁を乗り越えるのは相当たいへんです。
茶箱
どうしようもなくつらい、苦しいと思ったら、一人では悩まないことが鉄則よ
周りに信頼できる人がいなかったら、専門機関に連絡するくらいの勇気と行動力をもつのをおすすめします。
壁を乗り越えるポイント
● だれかの優しさやが精神的な救いになることもある
● 根本的な解決は専門家や大人に任せる勇気も必要
『櫓太鼓がきこえる』
【著者】 鈴村ふみ
【出版社】 集英社
【出版年】2021年2月
なにもかもが上手くいかなくて自分に自信がなくなったとき
相撲世界の裏方「呼出」にスポットをあてた物語を紹介します。
親との関係が上手くいかなくなり、逃げるように家からでた17歳の篤くん。
叔父のすすめで弱小の朝霧部屋に呼出見習いとして入門し、親から離れて、関取たちと親方夫婦との暮らしが始まります。
仕事にも自分に自信がまったくもてない篤くんがが、呼出の仕事を通して成長していく物語です。
同じ部屋の関取たちにも、呼出仲間たちにも、そのひとりひとりに生き方や人生があります。
自分だけが壁にぶつかり生きにくさを感じているわけじゃないと気づく篤くん。
親元にいたときは、なんだかんだと甘えがあったのかもしれませんね。
篤くんは、自分では気づいていなかった自分の魅力にも気づけるようになります。
あえて厳しい道に自分を放り出して、新しい道に踏み出してみれば、新しい自分と出会えるかもしれません。
茶箱
壁にぶつかったら、今までと同じ方向ばかりみるのではなく、違う方向を見てみるのもいいのかもね
* 第33回小説すばる新人賞受賞作
壁を乗り越えるポイント
● あえて新しい道に進んでみる
● 自分の魅力を見つけてみる
『わたしのカレーを食べてください』
【著者】幸村しゅう
【出版社】小学館
【出版年】2021年1月
小さなころから困難の壁ばかりにぶつかりまくっている人
小学生の頃食べたカレーライスの味が忘れられない成美ちゃん(19歳)は、あのカレーライスをつくるためカレー三昧の日々を過しながら、満足するカレーを追い求める毎日。
実は成美は小学生の時から児童施設で育ったため、カレーつくりを極めて自立して生きていこうとしているのです。
生きるため、自立するため、そればかりを優先させカレーにのめりこんでは、周りから浮いてしまったり、カレーつくりに没頭しすぎて店の経営が上手くいかなかったり、信じていた人に裏切られたり、同じ施設育ちの仲間を助けてあげられなかったりと、成美はいろんな壁にぶつかります。
それでもカレーへのこだわりは成美を成長させ、成美自身を作りあげていきます。
物語には、不器用でも真剣に「生きること」に向き合っている成美ちゃんを姿をみて、本当に困ったときには助けてあげようという人が登場します。
でも悲しいことに、成美ちゃんはいい人ばっかりに出会うわけではありません。
最初は「あやしげな」人が知ればとっても親切な人だったり、逆に信頼できるいい人だと思っていた人が「え!」と思うような人だったりします。
現実なんてそんなものです。
人を見る目は、社会にでて失敗して痛い目にあって身につけていくしかないのかもしれませんね。
*第2回「日本おいしい小説大賞」受賞作
茶箱
失敗してこそ人を見る目を育てる力が身につくのよね
壁を乗り越えるポイント
● 人を見る目を鍛える
● 今まで頑張ってきた自分を信じる気持ち
まとめ
【壁にぶちあったとき読みたい本】5冊はいかがでしたか?
最後は自分で壁を乗り越えなくてはならないけれど、本の主人公は壁を乗り越えるのに必要なものを教えてくれます。
●『透明な耳』
壁乗り越えポイント:支援してくれる人を手放さない
●『こんぱるいろ、彼方』
壁乗り越えポイント:自分の”常識”を疑う
●『オリオンの上』
壁乗り越えポイント:勇気をもって第三者への手助けをも考える
●『櫓太鼓がきこえる』
壁乗り越えポイント:新しい世界にとびこんでみる
●『わたしのカレーを食べてください』
壁乗り越えポイント:人を見る目を鍛える
* 今回一番おすすめの一冊です。
茶箱
それぞれの本を参考にして、自分らしい方法で人生の壁を乗り越えられることを祈ります
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