茶箱
大人向けの本12冊から抜粋した【青春している子どもたち】が活躍する短編集を紹介するわ
実際に読んで、小学生・中学生におすすめの短編を選びました。
ここ数年に出版された本を中心に選んでいます。
茶箱
同じ年ごろの子どもが主人公だから物語に共感しやすいわよ
【悩める子どもたち】が登場する短編を紹介した記事も合わせて読んでみてね
【青春している子どもたち編】小学生・中学生におすすめの短編
『金の角をもつ子どもたち』
【著者】藤岡陽子
【出版社】集英社
【出版年】2021年5月
● おすすめ短編:「自分史上最高の夏」
● 主人公:中学受験生、小学6年生の俊介くん
小学6年生になって突然日本難関中学を受験したいと言いだした俊介くん。
必至で受験勉強を頑張った夏を乗り切った後に襲ってくる受験への不安や、なぜ彼が難関中学に進学したいのか。
がむしゃらに頑張る一方で、繊細な心、やさしい心をもつ俊介君の物語です。
茶箱
頑張り屋の俊介君でさえ心がグラグラ揺れる、受験戦争の厳しさに驚いたわ
『月まで三キロ』
【著者】伊与原新
【出版社】新潮社
【出版年】2018年12月
● おすすめ短編①:「月まで三キロ」
● 主人公:中学生の息子を亡くしたタクシードライバー
● おすすめ短編②:「アンモナイトの探し方」
● 主人公:中学受験生の12歳男の子
● おすすめ短編③:「エイリアンの食堂」
● 主人公:不眠気味の小学3年生の女の子
『月まで三キロ』は、生きることに行き詰った人たちが登場する6つの短編集です。
東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し博士課程を修了している、著者の伊予原さんらしい理系的内容が含まれた物語になっています。
おすすめの短編は3つ。
短編「月まで三キロ」は、死を考えている男性が乗ったタクシーのドライバーさんが、たんたんと語る自殺した中学生の息子の話です。
感情をあらわにしないからこそ、ドライバーさんの怒りをや悲しみや辛さがひんやりと伝わってきます。
短編「アンモナイトの探し方」では、精神的に不調になり祖父の住む北海道で夏を過ごす中学受験生の12歳の少年が、化石の魅力に惹きつけられてしまう物語。
短編「エイリアンの食堂」は、小学3年生の鈴花ちゃんが、お父さんが営む食堂に毎日お客さんとしてやってくる素粒子物理学者の女性プレアさんと語る物語です。
人生はいつも明るいわけではない。暗い闇に包まれたとき、誰かとの出会いがキッカケで闇に明るい陽が差し込むことがある。
どの短編も、そんな人生の偶然の出会いの奇跡が書かれています。
茶箱
人と人との出会いって偶然なのかしら?必然なのかしら?
『白野真澄はしょうがない』
【著者】奥田亜希子
【出版社】東京創元社
【出版年】2020年10月
● おすすめ短編:「白野真澄はしょうがない」
● 主人公:頼りない小学校4年生の男の子
白野真澄という名前の人たちが主人公になった短編集です。
同じ名前でも男性も女性もいるし、それぞれの年齢も違います。
小学校4年生の白野真澄くんは、クラスでも頼りないし何をしても「しょうがない」といわれてしまうような男の子。
友達もいなかった彼は、彼のクラスにやってきた転校生の男の子と仲良くなり、転校生の家に遊びに行くことになります。
初めて行く友達の家に興奮気味の真澄くん、SNSを使いこなす転校生と彼のお兄さんの行動にビックリ!
転校生と友情を深めたいけれど、SNSはちょっと怖い
真澄君のピュアな心、「どうしたらいいんだろうか?」と思う気持ちが痛いほど伝わってきます。
茶箱
友達ができたと喜ぶ真澄くんのピュアさが、心にささったわ
『悲しみの夜にカピバラが教えてくれた大切なこと』
【著者】瀧森古都
【出版社】SBクリエイティブ
【出版年】2021年5月
● おすすめ短編:「エコヒイキ」
● 主人公:ネコを飼いたい小学生2年生の男の子、健太君
母親に捨てられた(と思われる)少年は、名前を加比原譲二(かぴばら・じょうじ)と名付けられた。
30年後、成長したカピバラさんは、 動物園の清掃員とその隣にある小学校の用務員として働いている。
カピバラさんは完璧な人間ではなく、どちらかといえば、苦手なことが多い人間ですが、人を疑うことのないピュアなカピバラさんは愛や家族、本当の正義について教えてくれる不思議な人なのです。
「エコヒイキ」では、拾ったネコを飼うのをお母さんに反対されたという健太君に頼まれてネコを預かったカピバラさん。
カピバラさんは、健太君からお母さんや家族の話を聞いた後、健太君の担任野口先生とエコヒイキについて語ります。
エコヒイキと特別の違いは?
あまりにもピュアなカピバラさんの話に野口先生もタジタジになってしまいます。
茶箱
”裸の大将”山下清さんのようなカピバラさんの純粋さに感動!
『クレイジー・フォー・ラビット』
【著者】奥田亜希子
【出版社】朝日新聞出版
【出版年】2021年7月
● おすすめ短編①:「クレージー・フォー・ラビット」
● 主人公:隠し事の「匂い」をかぎ取る少女、小学生の愛衣ちゃん
● おすすめ短編②:「テスト用紙のドッグイア」
● 主人公:隠し事の「匂い」をかぎ取る少女、中学生の愛衣ちゃん
● おすすめ短編③:「ブラックシープの手触り」
● 主人公:隠し事の「匂い」をかぎ取る少女、高校生の愛衣ちゃん
小学生から30歳を過ぎたひとりの女性、愛衣の成長を描く連作短編集です。
愛衣は小さなころから隠しごとの「匂い」を敏感に感じてしまうため、人間関係が築きにくいと自分では思っている女の子です。
(女子ならだれもがもっている敏感さなんでは!?と思いますが(笑)
小中高校時代の愛衣ちゃんは、友達をつくらなくちゃと思ったり、友達との距離の取り方に悩んだり、ちょっとしたことで仲間外れになったかもと思ったりと、つねに友達問題に悩んでいます。
どの短編も、考えすぎ?、イヤ、共感しちゃうな~と思える内容です。
友達関係に息苦しさを感じている人へおすすめしたい一冊です。
茶箱
学校という、あの恐るべき集団生活を生き抜くには、友達って必要不可欠なのよね~
『スカートのアンソロジー』
【著者】朝倉かすみほか
【出版社】光文社
【出版年】2021年8月
● おすすめ短編:「そういうことなら」佐原ひかり著
● 主人公:彼氏の考え方が理解できない高校生の女の子、吉野さん
『スカートのアンソロジー』は、9人の人気作家が書いた、スカートをモチーフにした短編集です。
おすすめしたいのは、佐原ひかりさんの短編「そういうことなら」
制服の自由化が始まったら、スカートをはいて登校するようになった吉野さんの彼氏。
女子高校生の吉野さんは、友達の前ではそんな彼氏に対して平然な態度をしていますが、内心は驚きと疑問でいっぱいなのです。
茶箱
自分にとって大事なモノが、他の人にも大事なモノとは限らないのよね
『息子のボーイフレンド』
【著者】秋吉 理香子
【出版社】U−NEXT
【出版年】2021年3月
● おすすめ短編:「聖将」
● 主人公:高校生2年生の聖将くん
高校生2年生の聖将くんから「ゲイ」だと告白され、ウロたえる家族の物語です。
LGBTに理解のあるつもりなのに、自分の息子になると素直に受け入れられない。深刻な問題でありながらも、あたふたする家族の温かさをも感じます。
「好きになったのが男だっただけ」、”ゲイ”であることを母親にカミングアウトをした聖将くん自身の物語です。
茶箱
頭ではわかっていても、当事者となると難しいことって多いわよね
『本バスめぐりん』
【著者】大崎梢
【出版社】東京創元社
【出版年】2016年11月
● おすすめ短編:「道を照らす花」
● 主人公:団地に引っ越してきた美少女中学生、杏奈ちゃん
種川市の移動図書館が「本バスめぐりん」
3000冊の本をのせて、、巡回先でめぐりん号と六十五歳の新人運転手テルさんと図書館司書ウメちゃんのでこぼこコンビを待ち受けるのは、本を介した不思議な謎ばかり。
人と本が繋がるほっこり温かくなる短編集です。
「道を照らす花」は、母親を亡くして父親とふたりで団地に引っ越してきた美少女中学生の杏奈ちゃんの物語です。
新しい生活に慣れない杏奈ちゃんを団地のみんなはやさしい気持ちで気にかけています。
ある日、本バスめぐりんの利用者の杏奈ちゃんは、一冊の本の前で泣き出してしまいます。
茶箱
思い出の深い本ってあるわよね~
『バスクル新宿』
【著者】大崎梢
【出版社】講談社
【出版年】2021年8月
● おすすめ短編:「犬と猫と鹿」
● 主人公:おじいちゃんと二人暮らしの中学3年生の男の子
新宿にあるたくさんの人々が行き交うバスターミナル「バスクル新宿」を起点にした、バスをめぐるミステリー短編集です。
おすすめは「京都」⇔「東京」行のバスが舞台となった物語です。
奈良に修学旅行中に行ったはずの中学三年生の男の子が、その日の夜、東京の”家”にいたようだという目撃情報が!
男の子は二人いるの?ワープできるの?謎は深まります。
一緒に住むおじいちゃんは知っているのかな?
茶箱
とっても不思議だった男の子の行動だけど、理由がわかるとスッキリ
やさしい男の子の気持ちにほっこりしたわ
『ブックのいた街』
【著者】関口尚
【出版社】祥伝社
【出版年】2015年4月
● おすすめ短編①:「いとしのニキ」
● 主人公:年上のステキな女性に恋をした男の子
「ブックの前だと素直になれた」とみんなが思う、ラブリ商店街で飼われている犬”ブック”を中心とした心あたたまる犬の連作短編集です。
おすすめの短編は、犬を飼っている年上のステキな女性に恋をした男の子の物語。
”ブック”を連れて、犬を介して女性と仲良くなろうと計画します。
茶箱
積極的な男の子の行動に同伴する”ブック”が、おもしろくてかわいいわ
『昭和40年男 オリンポスの家族』
【著者】佐川光晴
【出版社】ホーム社
【出版年】2019年9月
● おすすめ短編:「じゃりン子チエは神」
● 主人公:中学2年生の次女の千春
昭和40年生まれ、オリンピックを目指す体操選手だった山田三男は、大けがにより体操をやめ専業主夫になっています。
山田家は、会社で働く元走り幅跳びの選手の妻、新体操選手として活躍する長女、姉にコンプレックスを抱く次女の4人家族。
子どもが成長するにつれ、三男は次々に家族の問題に巻き込まれていくのです。
おすすめは第一話の「じゃりン子チエは神」。
美人の姉にコンプレックスを持っている次女の学校で起きたいじめ問題の物語です。
茶箱
家族を守るために全力を尽くす専業主夫の三男の姿がカッコいいわ
『駒音高く』
【著者】佐川光晴
【出版社】実業之日本社
【出版年】2019年1月
小学生・中学生におすすめの短編
● おすすめ短編:「初めてのライバル」
● 主人公:小学校5年生の野崎君
➡2020年芝中学校の中学入試で出題されました。
● おすすめ短編:「それでも、将棋が好きだ」
● 主人公:中学校1年生 の小倉君
将棋の世界の厳しさ、将棋にハマる人たち、将棋の楽しさが書かれた短編集です。
短編「初めてのライバル」
半年前から将棋を始め将棋にどハマり中の小学5年生野崎君は、恵まれた環境で将棋をしている小学校2年生の山沢君に初めて負けてしまう。
野崎君は負けたことが悔しくてたまりません。
短編「それでも、将棋が好きだ」
小学3年生から始めた将棋が勝てなくなってしまった中学1年生の小倉君。
優秀なお兄さんがコンプレックスで、自分が認めてもらえる価値は”将棋”だけなのに、それさえ失ってしまうのだろうか。
茶箱
将棋の世界の緊迫した雰囲気と厳しさが伝わってきたわ
まとめ
2022年冬 【青春している子どもたち編】大人向けの本12冊から抜粋した、小学生・中学生におすすめの短編はいかがでしたか?
●『金の角をもつ子どもたち』
青春中の子ども:中学受験生、小学6年生の俊介くん
●『月まで三キロ』
青春中の子ども:中学生の息子を亡くしたタクシードライバー
青春中の子ども:中学受験生の12歳男の子
青春中の子ども:不眠気味の小学3年生の女の子
●『白野真澄はしょうがない』
青春中の子ども:頼りない小学校4年生の男の子
●『悲しみの夜にカピバラが教えてくれた大切なこと』
青春中の子ども:ネコを飼いたい小学生2年生の男の子、健太君
●『クレイジー・フォー・ラビット』
青春中の子ども:隠し事の「匂い」をかぎ取る女の子愛衣ちゃん
●『スカートのアンソロジー』
青春中の子ども:彼氏の考え方が理解できない高校生の女の子、吉野さん
●『息子のボーイフレンド』
青春中の子ども:「ゲイ」と母親に告白した高校生2年生の聖将くん
●『本バスめぐりん』
青春中の子ども:お父さんと二人で団地に引っ越してきた美少女中学生、杏奈ちゃん
●『バスクル新宿』
青春中の子ども:おじいちゃんと二人暮らしの中学3年生の男の子
●『ブックのいた街』
青春中の子ども:年上のステキな女性に恋をした男の子
●『昭和40年男 オリンポスの家族』
青春中の子ども:専業主夫の父親をもつ中学2年生の次女の千春
●『駒音高く』
青春中の子ども:将棋にどハマり中の小学校5年生の野崎君
青春中の子ども:将棋で勝てなくなった中学校1年生 の小倉君
茶箱
こどもたちの青春している姿は、どんなに悩んでいても、どこかキラキラしているわよね
【悩める子どもたち】が登場する短編を紹介した記事も合わせて読んでみてね