茶箱
【日本人の母をもつ海外で生きる息子たち】の生き方を、変わりゆく日本に住む人みんなに知ってほしいわ
同じ時期に、ブレディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』と、ヤマザキマリさんの『ムスコ物語』が刊行されたのを知っていますか?
現在、ブレディさんはイギリス、ヤマザキさんはイタリアと日本で生活をしています。
二人には外国人の夫がいて、息子がいます。
同世代二人のエッセイ本は、彼女たちの息子さん、つまり【海外で生きる日本人の母をもつ息子】の話しが書かれた本です。
ひとりひとりでも魅力のあるお二人の本ですが、共通点の多い彼女たちのエッセイは合わせて読むと倍の面白さが味わえます。
茶箱
日本にしか住んだことのない人でも、両親二人とも日本人の人でも、子どものいない人でも、日本人みんなにおすすめしたい本よ
海外で生きる息子を持つブレディみかこ・ヤマザキマリのエッセイを比較しながら読んでみた
ブレディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
【著者】ブレディみかこ
【出版社】新潮社
ブレディみかこさんとは?
1965年福岡県生まれ。
日本在住の頃からパンクミュージックに傾倒し、高等学校を卒業して渡英したあと一度日本に帰ってきたが、1996年に再び渡英。
英国在住は20年を超える。
ブレディ一家の住んでいる場所
イギリス南端にあるブライトン。
(ロンドンからは車で2時間程度離れた場所)
公営住宅地に住んでいる。
ブレディ一家
●父ー英国人(アイルランドの移民二世) ダンプ運転手
●母ーみかこさん 日本人 40歳すぎて息子を生む
●息子ー東洋人顔 真面目な性格 ギターを弾く
息子さんの学校
中学校 元底辺中学と呼ばれる公立高校
英国人で白人が9割を占める 殺伐とした雰囲気、いじめも喧嘩もある、低所得家庭の子も通うリアル社会の縮小版のような学校
小学校 名門校と呼ばれるカトリック校
多様な国の子が集まったミドルリッチな家の子たちが集まっている学校
元底辺中学に通う息子さんの様子が書かれたエッセイ
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は2冊刊行されています。
1冊目は、息子さん13歳、中学に入学するところから始まります。
2冊目では、息子さんは義務教育最高年の9年生になります。
日本からすれば、同じ島国といえども、イギリスは多様な人種が暮らすのが当たり前になっている印象がありますが、それでも、日本人である母みかこさんも、日本人の母をもち東洋人顔の息子さんも、イギリスでの生活は自分がマイノリティであると常に感じています。
息子さんは、それに加えて思春期ならではの友達との関係や、勉強のこと、親子関係についても悩みます。
2冊目では成長した息子さんは、さらに自分のことだけでなく、政治のこと環境のことにも目を向けていきます。
1作目と2冊目合わせて読むと、どんどん息子さんが成長していく姿が楽しめます。
茶箱
息子さんが問題にぶち当たると、まるで自分の子どもように、一緒に悩んだり考えたりしちゃうったわ(笑)
そして息子さんと一緒に、母であるみかこさんもお父さんも成長していきます。
ヤマザキマリ『ムスコ物語』
【著者】ヤマザキマリ
【出版社】幻冬舎
ヤマザキマリとは?
1967年東京都生まれ。
父は生後まもなく亡くなったため、ヴィオラ奏者だった母親のもとシングルマザーの家庭で育つ。
17歳で高校を中退し、単身イタリアへ渡りフィレンツェで美術史と油絵を学びながら11年間過ごした。
フィレンツェ在住時に詩人(イタリア人)と恋仲になり妊娠したが、その詩人とは別れ、男児を出産してシングルマザーとなる。
その後、14歳年下のイタリア人男性と再婚している。
ヤマザキ家の住んでいる場所
イタリア➡子どもを産んでから北海道(マリさんの母の住む)➡中東シリア(再婚のため)➡ポルトガル(中東が危険になり)➡アメリカシカゴ(夫の仕事のため)➡イタリア・ハワイ・日本(夫イタリア、マリさんイタリアと日本、息子ハワイから日本)
ヤマザキ家
●父ーイタリア人詩人 息子が生まれる前に離婚
●再婚相手ーイタリア人 マリさんより14歳年下 研究者 古代ローマおたく・レゴが好き
●母ーマリさん 日本人 漫画家『テルマエ・ロマエ』が大ヒット
●息子ーやさしい性格 誰にも気を遣える 適応力強め レゴが好き
息子さんの学校
大学 ハワイ
工学部で学ぶ
高校 シカゴ
エリート校 睡眠時間が無くなるほど勉強漬けの日々
小学校・中学校 ポルトガルリスボン
10歳にリスボンへ リスボンの多様な子どもたちが通う公立学校
中学までリスボンで過ごす(数学が得意で全国数学選手権代表にも選ばれた)
小学校 北海道
札幌近郊の山の中にある小さな学校
息子さんの成長とマリさんの子育てについて書かれたエッセイ
世界各国のあちこちで暮らしてきたヤマザキさん一家。
親の都合に合わせて生きてきた息子さんは、各国でいろんな経験をしています。
マリさんは早い段階から、どこにいてもマイノリティになってしまう息子さんが必ず向き合うアイデンティティについて、必要以上に息子さんが悩み過ぎないようにと考え、できる限り世界の様々なところへ連れていったそうです。
息子さんは、親の勝手であちこちに振り回されたと感じながらも、自分の問題は自分で解決しなくてはならないことに気づいています。
どこか大人びた雰囲気を感じる息子さんですが、どのエピソードも彼のやさしさがあふれています。
茶箱
まりさんの子育ては、息子というひとりの人間の成長を見守っているようだったわ
【日本人母をもつ海外で生きる息子たち】の生き方
ブレディみかこさんとヤマザキマリさんのエッセイを比較しながら読んだときに、二人の母親、二人の息子さんには共通することがとても多かったです。
共通点
●海外では中国人に間違えられる(東洋人はみんな同じという考え)
●日本にくればガイジンと呼ばれジロジロみられる
●アイデンティティについて悩む
●周りに同じようなマイノリティの人たちがいる
●どの国、どの共同体でも異質なものとしてまずは洗礼を受ける
●自分を守る、その社会のなかで生き抜く方法をみつけようとする
●子どもは大人が思うよりもずっとたくましい
●母にも父にもわからないことがいっぱいある
●親は息子を一人の人間として信用し、尊重している
●母と子の仲がいい
など。
ちょっとよく考えてみれば、これってだれもが悩むことじゃないかな?と思うこともいっぱいありました。
茶箱
彼らの悩みは、人種の違う両親から生まれたから悩むことばかりじゃないの
誰しもが悩む問題ばかりなのよ
二人の息子さんの生き方や考え方、そしてその息子さんを見守る母と父の子育ては、世界のどこに住んでいようと、両親の人種がどうであろうと、すべての人たちに参考になるものでした。
まとめ
茶箱
二人のエッセイは合わせて読むのがおすすめよ
ブレディみかこ・ヤマザキマリのエッセイを合わせて読んで【日本人母をもつ海外で生きる息子たち】について考えてみました。
彼らは、日本のなかのぬるま湯でぼんやりと生きて生きた中年の私よりもずっと大人で、自分のアイデンティティをわかっていて、それに合った生き方をしっかりと考えていました。
そして二人の母親は、アイデンティティに悩んだ先輩として、日本人として海外でたくましく生きて、愛する子どもを信頼し一人の人間として接しながら子育てをしていました。
ブレディみかこさん・ヤマザキマリさんの本を読んで感じたことは、だれしもマイノリティの一面はもっているのではということ。
同じ人種であろうとも人はそれぞれ違いますし、社会もずっと同じではないからです。
だからこそ、どんな社会にでも生きていける自分、自分が社会にできることは何かを考えていくべきなんだと【日本人の母をもつ海外で生きる息子たち】から学びました。
茶箱
自分のアイデンティティについて考え出した思春期の子どもたち、子育て中の父母、そして変わりゆく日本に生きる人たちみんなに読んでほしい本よ