人間も嘘も、誰かにとっては救いになって、誰かにとっては悪になる。人間は、嘘だ。嘘は、人間だ。
(p.220)
▶▶嘘によって救われた体験をもつ八吹錯の言葉
人間関係を上手く築けず、友達もいなかった錯は、ネットの世界に出会って救われた経験がある。
錯は、ネットの世界は言葉と情報だらけ、嘘と本当だらけで、現実よりもずっと広くて深いように考えている。
『嘘吹きネットワーク』
【著者】久米絵美里
【出版社】PHP研究所 (2020/12/17)
あらすじ・感想
主人公の理子は小学6年生
自分で「学級員よ」と言っちゃうくらい正義感の強い女子
理子は町の八吹写真館に入りびたって、SNS用の画像加工をしている少年がいるというウワサを聞き、デマの元になっている画像加工について確かめようと八吹写真館へ出かける。
そこでウワサどおり、画像加工を受け付けている同じ年齢くらいの少年、八吹錯に出会う。
理子は錯に出会いビックリする事実を教えてもらう。なんと錯は嘘を見分ける力をもっていたのだ。
それから、理子はクラスに次々に持ち上がるウワサによる問題を解決するため、錯の元を訪れるようになる。
理子はクラスの秩序を守るために、クラスで大騒ぎになっているウワサが嘘なのかを教えてほしいと錯に頼むのだが、錯は「それを知ってどうするの?」と逆に問いかけてくる。
● SNSとの付き合い方について考えさせられる
● うそは悪いことなのか、わからなくなる
● とにかく感想文の書きやすい物語
SNSによって情報が拡散されていく速さ、影響の大きさを恐ろしく感じた。
つぶやいた・書いたの一言は、一度送信してしまえば、あっという間に世界中に広まり、永遠に情報が残り続ける。
SNSの操作を誤ったから、操作方法を知らなかったからでは済まされない。
一方でSNSを使えば、見知らぬ人と繋がり、同じ興味を持つ人や、同じ感性の人と気軽に繋がれる。
年齢も性別も国籍も関係なく、多くの人と繋がりをもてるのだ。
さらに、そこから自分が普段の生活では知りえない情報が気軽に手に入る安易さと便利さもSNSの魅力だ。
SNSでは嘘も簡単にひろまっていく。
だれかが真実だと思っている情報が嘘であろうと関係なく、まるで真実のように拡散してしまう。
その情報が、嘘か真実だと見分けられるか?
見分け方は、それを信じるか、信じないのかなのか?
自分が正しいと思っていることが真実なのか?
さらに、自分の発する情報に責任をもてるのか?
SNSについて、いまいちど考えさせられる物語だった。
茶箱
とにかく感想文の書きやすい物語なので、ぜひ読んでほしいわ
小学校6年生のクラスで起こったSNSの問題が物語になっていて、自分もクラスの一員になったような気分で読めるので、子どもも読みやすい内容です。
そして、取り扱っているテーマがすごく読書感想文が書きやすい。
SNSの有難さと怖さの表裏一体にどう感じるか?
体験しないとわかりにくい、SNSの便利さやおもしろさといったメリットと怖さや複雑さのデメリット
SNSを深く考えず、興味本位だけで使っているなら、まずは読んでほしい一冊
SNSが人気になる理由も、SNSの怖さも、SNSの魅力もつまった物語です。
自分が子どものころにはなかったSNSについてよくわからないと思っている大人にも、ぜひおすすめします。
茶箱
SNSを使っていてもいなくても、子どもも大人も考えさせられる物語よ
次に読みたいおすすめ本
『二番目の悪者』
主人公はライオン、登場するのはみんな動物。
でも人間の私たちの社会でありえるようなことが起きるのです。
”うわさ”の怖さが書かれていると同時に、うわさを流した張本人だけではない、信じた人にも自分の行動言動は正しかったのかと説いている絵本。
茶箱
これおすすめ!『嘘吹きネットワーク』と合わせて読んでほしい一冊よ