丁寧に本をつくり、より多くの読者に届けるためにしかるべき努力をすること。そしてミュゲ書房で本の魅力を伝え続けていく。それが俺の仕事だ。
(p.263)
▶▶ミュゲ書房店長 宮本章の想い
活躍する人たちを密着取材するドキュメンタリーテレビ番組「情熱大陸」の音楽がここで聞こえてきそうだった(笑)
『ミュゲ書房』
【著者】伊藤調
【出版社】角川書店
茶箱
本が好きな人にぜひぜひ読んでほしい一冊よ
あらすじ・感想
自分のせいで有望な作家の未来をつぶしてしまった。
大手の出版社を辞めて、北海道A市で祖父と祖母がつくりあげたミュゲ書房を引き継ぐことになった宮本章。
だが、本屋の経営はそう甘くない。
本屋内のカフェを担当する就職活動中の池田君や、選書サービスをしてくれる高校生の桃ちゃん お店のお手伝いをしてくれる菅沼さんの力をかりながら、どうにかミュゲ書房を盛り立てていく。
そんななか章は、今までの出版社で培ったノウハウを生かし本の出版を手掛け始める。
本屋の経営や、本と本屋を結ぶ取次、出版業界の裏側、本の装丁の作り方、本を出版するまでのあれこれ、本を売る方法、本を取り巻く状況や問題が書かれた物語
● 物語中にたくさんの本・絵本が登場する
● ミュゲ書房の雰囲気がステキ
● おいしそうなミュゲ書房のカフェのお菓子
● 本への愛があふれている
物語を読み始めてすぐに、ミュゲ書房に行ってみたくなります。
大正末期に建てられた洋館を改装したお店
壁全面の本棚 布張りの椅子やソファ、小さめのテーブルが置かれている
青緑色のステンドグラスで幾何学模様をあしらった磨りガラスからは、柔らかい光が差し込む。
店の奥にある間口をくぐると「塔の部屋」がある。
筒状の吹き抜けで、壁に沿ってアーチ状の階段をのぼると、二階部分にはぐるりと通路がついている。
茶箱
こんな素敵な本屋さん、想像するだけでウットリしちゃいます
物語は本を中心にすべてが繰り広げられています。
本を作り売り出すたいへんさや、幸せさがぎゅっと詰まっていました。
本を手に取ったときのうれしさや、本を読んだ後の幸福感って、本をつくりだした人たちの想いが本につまっているからなんだなと、じんわり感じられます。
茶箱
本好きにはたまらない物語よ
加えて、私の『ミュゲ書房』イチオシおすすめポイントは、お菓子と本が結びついたおいしい本であることなんです。
みやこしあきこ『もりのおちゃかい』に登場するケーキやお菓子
佐々木マキ『へんなお茶会』にでてくるココア
尾崎翠『アップルパイの午後』のアップルパイ
クリスマスツリーには、キラキラ光る色とりどりの飴が埋め込まれたステンドグラスクッキーが飾られます。
茶箱
たまらなく、おやつが食べたくなる本でもあるのよ
おいしい、美しいだけの物語ではないのが、この本の最大の魅力です。
大手出版社との本をめぐる闘いや、本を売り出すための戦略、商業的な作品を生み出す作者の苦悩といった、本に関するシビアな内容も書かれています。
そこがさらに、本のおもしろさを倍増させてくれます。
物語に登場する本の一覧は巻末にあるので、ここから気になる本を続けて読むのもおすすめです。
茶箱
自分の知っている本が登場すると、うれしいわよ
『ミュゲ書房』は、本を愛する気持ちがたっぷりつまった本です。
ぜひ読んでみてくださいね。
この本を読んだら、もっともっと本が好きになっちゃいますよ。
茶箱
本中毒に注意ね(笑)
次に読みたいおすすめ本
『世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話』
世界中にあるたくさんの本屋さん
一軒一軒に素敵なストーリーがあります。
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『金曜日の本屋さん』
3人の高校同級生で読書会の仲間が営む本屋カフェが舞台
訪れてくれたあなたに合ったお望みの本を探してくれます。
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さあ、彼らはどんな本を渡されるのでしょうか?