茶箱
和菓子つくりは、自分探しと同じくらい難しいのよ
『和菓子迷宮をぐるぐると』
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【著者】太田忠司
【出版社】ポプラ社
● 和菓子の魅力
● 製菓学校が舞台の青春白書
あらすじ
和菓子店「華房」の和菓子を初めて見た時、大学で物理工学を専門に学んでいる涼太は「対数美的曲線ですね」と感動する
そんな彼が和菓子の魅力にグイグイとハマって、大学院への進学を辞めて製菓学校へ和菓子つくりにのめり込む。
だけど、和菓子つくりは迷宮に入りこんだように奥深かった。
製菓学校で一緒になったメンバー仲間5人(男1人・女4人)の青春物語でもある
『和菓子迷宮をぐるぐると』に登場する和菓子
想像するだけで美味しそう、美しいだろうなと思えるたくさんの和菓子が登場します。
華房さん作の練切
白虎(白い虎)、朱雀(朱色の鳥)、青龍(青色の龍)、玄武(黒い亀)(四神)に形どられた和菓子
朱雀➡中は黄身餡
玄武➡中は赤みの強いこしあん
青龍➡中は白餡
白虎➡中は黒味のつよいこしあん
外と中の色のギャップが美しい
華房さん作 秋の三色だんご
柿のようなオレンジ、薩摩芋を思わせる淡い黄色、栗のような茶色、三色で秋を表しているお団子
3つとも違うお砂糖を使っているため味が違う
柿のようなオレンジ➡上白糖
薩摩芋を思わせる淡い黄色➡グラニュー糖
栗のような茶色➡三温糖
【YAブック】10代に読んでほしい本
10代向け(中学生から)
和菓子作りを学ぶことだけじゃない、自分探しをもしている製菓学校の生徒たちを応援したくなります。
10代なら自分や自分の友達のように思いながら、読める本ですし、大人なら、すがすがしい青春を送る生徒たちが、うらやましくもあり、懐かしくもあり、みんなが自分の子どものように思えてくるはず。
自分の生きる道を模索する彼らの真剣な姿や、友達と送る学校生活の楽しさを味わいましょう。
ひとつのことに集中すると他が見えなくなる理系男子の真剣さは、なぜかキュートでおもしろいですし、ほんのり、ぼんやり(笑)恋愛もあります。
青春にありがちの友情や、自分探し、家族との関係、ほのかな恋愛あり
王道の青春物語よ
印象に残ったフレーズ
● 「作るってことが自分と向き合うことなのかもね」と言いながらも、それは難しい、面倒という仲間に対して涼太(理系男子)が言い切る言葉
「大事なことは、面倒なんです」
「大事でなければ避けるか捨てればいい。でも大事なことだから、避けて通れない。向かい合わないと」
(p.239)
めんどくさいで何でも終わりにちゃうと、そこから前へ進むことはできないのよね
毎日の家事も同じよ~
掃除もめんどくさいと思ったら終わりなのよね
● 理系男子、涼平には菓子作りの才能があるという伯父(修)の言葉
菓子作りは科学だもん
中略
『生地を膨らませる』という作業だけでも物理学、生物学、化学からのアプローチがある。極めて科学的だよ
(p.111)
なるほど~。
まったく関係ないと思っていたことが、大事だったりするのよね
● 餡子の作り方を教えてくれた先生の言葉
そしてあなた方は、ついに足を踏み入れるのです。餡の迷宮へようこそ
(p.123)
自分探しと、餡子作りは似ているわね
● 餡子の作り方を教えてくれた先生の言葉 パートⅡ
「どうやったら自分の作るものがより良くなるかなんて、ものを作っている人間ならずっと考えていることだよ。僕だって毎日考えてる。答えは見つからない。」
中略
「ないんじゃない。見つからないんだ。あれこれ試して、それで失敗してまた別の方法を試して、その繰り返し」
(p.136)
● 餡子の作り方を教えてくれた先生の言葉 パートⅢ
基礎もできないうちから至高を目指そうなんてのは、それこそ洒落臭いよね
(p.141)
『和菓子迷宮をぐるぐると』感想
激しい恋愛模様や、ギラギラした情熱はないが、今どきの若者らしいモヤモヤしながら、なんとなく熱中している青春模様が楽しめた。
ドラマでもなく普通の青春なんてこんなものだと思うので逆にリアル感あるピュアな若者の姿が見えてきます。
和菓子の魅力もたっぷり
繊細な造形・季節を表す和菓子は、ふだん忘れがちな日常に潜む美しさを伝えてくれます。
若い人にはなじみのない和菓子の世界を書いているので、この本を通じて和菓子に新しく興味を持つ人が増えそうです。
バリバリの理系男子が理論的に和菓子に挑む姿は面白カッコよかったわ
次におすすめしたい本
和菓子をもっともっと楽しみましょう
『和菓子のアン』坂木司
高校を卒業したアンちゃんは、デパートにある和菓子店で働き始めます。
アンちゃんはキャラ濃いめの仲間と働くうちに和菓子の秘められた魅力に気づき始めます。
『ニッポン全国 和菓子の食べある記』
日本あちこちにある和菓子の名店約350店、約500点の和菓子が紹介された、和菓子辞典のような本です。
町の小さな和菓子店も多く掲載されているので、「あれ?これってあのお店かも」と思うようなお店も登場します。