茶箱
中学受験界で今一番HOTな作家”いとうみく”さん
いとうみくさんの小説のなかで、中学受験生が親子で読み合ってほしい本を選んでみたわ
中学受験生が楽しく読める【いとうみく】さんの本を紹介します。
●【いとうみく】さんは神奈川県に生まれの児童文学作家。2012年『糸子の体重計』(童心社)でデビュー。
『朔と新』
【出版社】講談社
*2020年野間児童文芸賞受賞
2021年の難関私立中学校の、ラサール中学、栄光学園中学、浦和明の星中学、淑徳与野中学の国語の入試問題として出題されました。
▼中学入試での出典箇所が知りたいとおもったらこちらの記事
● 悩みも不幸なこともないと思っている幸せな人
● 家族と気持ちがかみ合わないなと思っている人
あらすじ・読みどころ
朔(兄)と新(弟)は兄弟
物語は朔が盲学校から自宅に帰ってくるところから始まります
実は一昨年、二人が乗った高速バスが事故にあい、朔は失目してしまったのです。
その事故にあった原因が自分にあると思い続けている弟の新は、久しぶりに兄と顔を合わせます。
ぎこちなさがのこる兄弟、家族
そんななか、朔がブラインドマラソンに挑戦したい、新に伴走をお願いしたいと言い出します。
読みどころ
兄弟、家族のなんとなくすれ違っちゃう、ぎこちなさ、はがゆさ
いとうみくさんの『朔と新 』は、人間の性がみえる物語なのよ
盲目になった少年の成長物語が物語のメインではないの
彼を中心に、周りの人間たちの目にはみえないかもしれない、本当の姿が浮かび上がるの
大人だって、子どもだって、強い人間、完璧な人間なんていない
弱い面や、いやらしい心、自分勝手ないやらしい面をもっている
大人も読みごたえのある一冊だったわ
『天使のにもつ』
【出版社】童心社
2020年「第66回青少年読書感想文全国コンクール」中学校の課題図書
● 毎日が退屈な人
● 先生、親と話すのがめんどくさいなと思っている人
あらすじ・読みどころ
中学2年生風汰くん、職場体験実習で保育園に行きます。
幼児たちの行動に、いつもはちょっとやんちゃな風汰くんがてんてこ舞い
そんななか、いつも風汰くんにひっついてくる”しおん君”が特に気になり始めます。
しおん君のお母さんから愛情を感じられない気がする、これは虐待なのか?
風汰くんにできることなんてあるのでしょうか
読みどころ
学校の勉強では学べない、職場体験を通して、学校と家庭以外の場所で大人と接して学べることがある
職場体験って、仕事の大変さを学ぶよりも、普段の生活では気づかないことに気づけるのがポイントなのよね
教えてもらうんじゃなくて、自分から気づく
それが一番の自分の生きる糧になるわね
読書も同じ
自分と違う世界に生きる人たちを物語を通して疑似体験できる貴重な体験なのよね
『かあちゃん取扱い説明書』
【出版社】童心社
● かあちゃんの小言にうんざりしている人
あらすじ・読みどころ
毎日毎日、ガミガミうるさいかあちゃんにウンザリ気味の小学校4年生の哲哉
どうにかかあちゃんを黙らせるために思いついたのが、かあちゃんの「取扱説明書」をつくることだった!
とうちゃんの意見も参考に、自分の好きなようにかあちゃんを操作しようとする哲哉
「取扱説明書」作成のため、かあちゃんの観察をしていると、自分の知っているかあちゃんだけが、母ちゃんのすべての姿ではないことに気づき始める
「かあちゃん取扱説明書」さあ、うまくいくかな?
読みどころ
なんだかんだ言っても、かあちゃんが大好きな哲哉ととうちゃんの気持ち
大人が読んでもおもしろい!
物語というよりも、友達の話を聞いているように楽しめたわ
哲哉くんの発想が的確で心理学者もビックリじゃない!と思うほどよ
私も旦那さんと職場の上司の「取扱説明書」を作ろうかと思ったわ(笑)
『チキン』
【出版社】文研堂
● 心が弱い自分を変えたいと思っている人
● スカっとしたい人
あらすじ・読みどころ
小学校6年生の拓
争いごとを避けて生きるのがモットー
だったのに、「言いたいことを言う」をモットーにした女の子、転校生の真中さんがやってきてからトラブルメーカーの真中さんのせいで、クラスの争いごとにに巻き込まれてばかり
真中さんにうんざりする反面、どこかでスッキリもしている拓
拓と真中さん、そしてクラスのみんなにも変化をしていく
読みどころ
真中さんのスカっとする発言
強烈なキャラの転校生がやってくると、クラスの雰囲気が一気に変わるわよね
全体をとおして真中さんと拓君のかけあいのおもしろさ、そしてクラスの雰囲気も伝わってくるから、おばさんの私も自分も同じクラスの一員になったように読めたわ
でも、真中さんにも実はバカ正直に生きている理由を知ったときには心がグッと痛んだの
面白い中に、じつは心の痛みも書きこまれている、こんなところが【いとうみく】さんの物語の魅力よね
『カーネーション』
【出版社】くもん出版
● 親子の無償の愛を信じていない人
● 苦しい自分の場所から逃げ出したい人
あらすじ・読みどころ
中学1年の日和は、小さなころから母親の愛情を感じたことがない
というより、むしろ嫌われている、避けられているとしか思えない
それは勘違いではなく、父親も気づいているし、母親自身も気づいていることだった
わが子だから無償の愛を注げるわけではない
現実の残酷さに気づく親子
日和の家族はどうなってしまうのだろうか?
読みどころ
誰かを無償の気持ちで愛する難しさと尊さを知る
子どもが読むには奥深い内容かもしれないけれど、実際にこんな親子っているんじゃないかしら?と思ったのよね
ジュール・ルナールの『にんじん』を読んだときに、親の冷たさに驚いたけれど、世界共通してある現実なのかもしれないわね
お母さんに愛してもらえないことを悩む日和と同じく、お母さんも子どもを愛せないことを悩んでいるの
そこに、お父さんがこの厳しい現実に向かい合ってくれて頼もしかったわ
『糸子の体重計』
【出版社】童心社
*第46回日本児童文学者協会新人賞
● 自分らしく生きたい人
● 友達をうらやましく思っている人
あらすじ・読みどころ
同じクラス5人の連作短編集
転校生をかばったらクラスの女子にからまれてダイエットをすることになった天真爛漫な性格 細川糸子
友達を信じられないクラスの女王さま存在の彼女 町田良子
思ったことをはっきり言えない自分に自信がない 高峯理子
町田さんの親友の座をキープし続けるために、他の友達が邪魔でしょうがない 坂巻まみ
明るくて元気でクラスの人気者だが実はお母さんのことで悩んでいる 滝島径介
糸子を中心にクラスの5人それぞれの悩みから、一歩踏み出す成長が書かれている
読みどころ
うらやましく思える友達も、また別の悩みを抱えている
子どもたちって、大人が思うよりもずっとナイーブなのよね
無邪気にみえても、心のなかでは友達のこと、家族のこと、自分のことで悩みがいっぱい
大人からみると、糸子ちゃんの演技ではない天真爛漫な姿や、友達思いのところがとってもキュートで魅力的だけど、子ども同士のあいだでは、糸子ちゃんの良さに気付けるのは難しいかも(笑)
”人を見る目”は、いろんなことを経験して身に付くものなんだよね
『羊の告解』
【出版社】静山社
● ありえないと思うくらいの現実の壁にぶつかった人
あらすじ・読みどころ
ごく普通の朝
中学校3年生の涼平に突然起きた現実
父が警察に逮捕され「殺人を犯した」というショッキングな事実が明らかに!
父は本当に殺人者なんだろうか?
これから自分たち「加害者家族」はどうなっていくのだろうか?
涼平の心はかき乱される
読みどころ
何を信じて、何を正しいと思い生きていくべきなのか
犯罪者の息子になった涼平と弟、犯罪者の妻となった母。そして犯罪者の親戚になる祖父母。さらには犯罪者の息子の友達になった中澤くんや美夏ちゃん。
そして当事者の父。
今日は昨日とは違って見える
「ぜったい自分には起きないこと」といえない、心にずっしりくる物語だったわ
【いとうみくさんの小説】中学受験生に読んでほしいおすすめ本7冊を紹介しました。
茶箱
【いとうみく】さんの本は、面白かったり、感動して涙が止まらなかったり、どうしてと?怒ったり、理解できなかったり、感情が大きく揺さぶられたわ
自分の普段の生活では体験できないことを物語の中では体験できる、読書のすばらしさを感じる本ばかりだったわ
紹介した【いとうみく】さんの小説6冊は大人が読んでもおもしろい物語なので、親子で読み合えるわよ
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