茶箱
中学受験の国語でよく出題されるまはら三桃さん
まはら三桃さんの作品は、読んでいて明るくなれるのがいいのよ
中学受験生が楽しく読めるまはら三桃さんの本を紹介します。
●まはら三桃さんは1966年生まれ。
2012年『鉄のしぶきがはねる』(講談社)で第27回坪田譲治文学賞を受賞、同作品は2013年第4回JBBY賞を受賞した。
『思いはいのり、言葉はつばさ』
【出版社】アリス館
あらすじ・読みどころ
中国・湖南省に実際に伝承されてきた文字(女書)をテーマにした物語。
漢族のチャオミン10歳は、女書を習いに行き、女だからの楽しさ、女だからこその辛さを知ることになる。
また、他民族の村での暮らしの中で民族の違いにも気づくようになっていく。
中学受験 2020年桜蔭中学入試(国語)で出題
出題箇所
出題された部分は
1つ目➡チャオミンが女書を始めて習う
2つ目➡祖母(父方の母)が女書を知っているらしいチャオミンの母を否定する
3つ目➡チャオミンが女書を書くの楽しさを知る
4つ目➡憧れの姉シューインの結婚式 シューインが仲間たち、チャオミンの母からの手紙を読む
と、4つのパートに分かれている
昔の中国が舞台の物語だけど、現代の日本にも通じる女の生き方が書かれた物語だったわ
”女だから”という生き方
表面上や世間体的に女性への偏見がなくても、現代の日本にも『思いはいのり、言葉はつばさ』に登場する女性たちと同じような辛さを味わっている女性はたくさんいることも、知ってほしいわ
特に中学受験生の女の子におすすめしたい本
親としては娘が結婚するときに、もう一度読んでほしい本でもあるわね
『奮闘するたすく』
【出版社】講談社
あらすじ・読みどころ
主人公は小学生5年生の佑(たすく)
学校の先生の提案(ほぼ指示)により、たすくは祖父が通うことになったデイサービス(通所介護施設)の体験レポートを友達の一平と二人で書くことになる。
たすくは、祖父とデイサービスに通い、認知症がすすんでいく祖父や、ほかの老人たちと接しながら、いろんなことを経験していきます。
介護、認知症について考えるきっかけにピッタリの本です。
【中学受験】2018年栄光学園中学入試(国語)で出題
出題箇所
①デイサービスに勤務する林さんが、デイサービスに行くのを拒んだおじいちゃんの気持ちを聞きに、わざわざ家に来てくれたシーン
②たすく君とお姉ちゃんがおじいちゃんの認知症について会話するシーン
これからの超高齢化社会に向けて必読の本よ
この本をきっかけに、家族で介護について考えたり、会話したりできるといいわね
孫のたすく君は、しっかり者だったおじいちゃんが変わっていく姿を、寂しい目だけでなく、楽しさを交えて、おじいちゃんと真正面から接しているの
おじいちゃんを理解したいと思っているたすく君の姿が頼もしいわ
『たまごを持つように』
【出版社】講談社
あらすじ・読みどころ
自信がない不器用だけど頑張り屋さんの早弥(さや)
弓道の才能に恵まれているがスランプに陥っているトラベルメーカーの実良(みら)
黒人の父をもち、武士道と真っすぐに向き合う少年、春(はる)
まったく異なる性格の中学弓道部男女3人は、弓道をとおして徐々に心を通わせていく。
たまごのように、こわれやすい心がぶつかりあう青春小説
【中学受験】2020年大宮開成中学入試(国語)で出題
出題箇所
出題された部分は物語の最後の部分
中学3年生になった3人
全国大会出場がかかった大事な試合決勝戦の様子が書かれた部分
3人の気持ちがひとつになる物語のハイライトといっても良いシーン
弓道部の3人は一見まったく違う性格にみえるけれど、実は自分を上手に表現する、自分の本音を伝えるのに苦労する不器用さを持ち合わせているのは似ているのよね
そんな3人が弓道を通して心を通わせていく、弓道部の男女3人の青春物語よ
3人がどんな大人になるのか続編が読みたいわ
『白をつなぐ』
【出版社】小学館
あらすじ・読みどころ
“全国都道府県対抗男子駅伝”が舞台の駅伝物語。
故郷の代表となった7人がたすきをつないで走る。
世代の違う中学生、高校生、大学生・社会人、普段はまったく違う場所で走っている選手たちで結成された当日かぎりのチーム。
彼らはそれぞれが、悩み、葛藤しながらも走り、たすけをつなげていくのだ。
連作短編集
駅伝とおなじく、メンバーがかわりがわりに主人公になった短編が繋がる物語になっています。
【中学受験】2017年桐朋中学校入試(国語)で出題
出題箇所
出題された部分は第5章 一区沢田瞬太
1区を走る高校生で、目に障害がある(目が見えない全盲)母親がいる
小学校から今までの、彼と母親との関係が語られる部分
タスキをつなぐ駅伝ってテレビでみるのも楽しいけれど、小説になるともっと楽しいよ
選手ひとりひとりの走る思いが伝わってきて、自分もメンバーの仲間になった気分になっちゃう
スポーツが苦手な人でも楽しんで読めます
物語には原爆投下、戦争について考えさせるシーンもあったわ
『風味さんじゅうまる』
【出版社】講談社
あらすじ・読みどころ
大正時代からつづく老舗和菓子屋「菓匠・一斗餡」の娘、中学2年生の伊藤風味ちゃんが主人公
風味ちゃんは美術部の仲間たちと文化祭の作品についてもめて以来、部に顔を出しづらくなっている。
そんなとき「菓匠・一斗餡」が、長崎街道沿いの菓子店が新製品菓子で競い合うSS1グランプリに参加することになる
「菓匠・一斗餡」がグランプリに出品する新商品とは?結果は?
そして、風味は美術部にもどれるのだろうか?
【中学受験】2017年国府台女子中学校入試(国語)で出題
出題箇所
第4章 風味の悶々(もんもん)
風味ちゃんが美術部の仲間ともめてしまうシーン
風味ちゃんの家族(おばあちゃん、お兄さん)のキャラが濃くて、ドラマを見ているように楽しめたわ
長崎周辺の和菓子について学べるのもおもしろいわよ
中学2年生の男子と女子の争いも読みどころね
『疾風の女子マネ』
【出版社】小学館
主人公はたくさんの男子から”ちやほや”されるためスポーツ部のマネージャーになろうとする高校1年生の見た目はギャルの咲良
一目ぼれした男子を追いかけて陸上部(リレーに特化したメンバー5人)のマネージャーになる
そこにはクールで有能な先輩女子マネがいて、ビシビシしごかれるのだが
「あれ?咲良ちゃんってスポーツに詳しいみたい?」
どうやら咲良ちゃんにも秘密があるようです。
【中学受験】2020年広島大付属中学校入試(国語)で出題
出題箇所
出題された部分は物語の最後
インターハイ出場を決めたリレーメンバーの故障に咲良が気づいたことによって、メンバー交代がおこなわれる
それによってうまくいっていたリレーメンバーの歯車が狂いだす
テレビドラマのように展開が早くて、今どきの若い子たちが読みやすい物語よ
登場する高校生は、つらい気持ちや、上手くいかないイライラや、人生への葛藤を抱えているけれど、みんな表面上は明るく振舞っているの
その姿は、若さゆえの自意識の高さも感じるわ
でも、それが青春なのよね
中学受験生よりちょっと年上の高校生の物語だけど、彼らの気持ちがわかりやすい文章だから共感できるはずよ
中学受験生が楽しく読める、まはら三桃さんの本6冊を紹介しました。
茶箱
自分が体験できないことを、物語の主人公たちが体験してくれる
そんな物語の楽しさをおもいっきり味わってね
▼2021年難関中学受験で出題された本(小説)を読んだ記事はこちら