茶箱
将棋を愛する男女7人物語よ(笑)
佐川光晴『駒音高く』
【著者】佐川光晴
【出版社】実業之日本社
佐川光晴さんの『駒音高く』は、2020年の難関私立中学校、芝中学校の国語入試問題として出題されました。
あらすじ・読みどころ
『駒音高く』は7つの連作短編集です
主人公は年齢も性別もバラバラですが、将棋を通してそれぞれの物語がつながっています
1 「大阪のわたし」 将棋会館の清掃をしている60歳を超えたシニアの女性
2 「初めてのライバル」 半年前から将棋を始めた小5野崎君は、小2の山沢君に初めて負けてしまう
3 「それでも、将棋が好きだ」 中1 の小倉君 小3始めた将棋が勝てなくなる 優秀なお兄さんがコンプレックス
4 「娘のしあわせ」 7か月前から将棋を始めた小4の葉子ちゃん 母親の悦子さんは「娘が女流棋士になるかも」とうれしさもあり心配もある
5 「高速の寄せ」 5歳から将棋を始め棋士を目指す20代の青年 プロになるための年齢制限26歳が迫ってきている
6 「敗着さん」 全国紙の記者、二本松さん53歳 若かりし頃はプロの棋士を目指していたが断念し将棋担当記者になった
7 「最後の一手」 若い棋士には負けないと気合が入った63歳、王座3連覇、十段1期、王将2期の輝かしい成績をもつ森川9段
茶箱
どの主人公も将棋が大好きで、将棋に対して真っすぐなのよ
将棋の厳しい世界が伝わる物語ばかりだったけれど、人生の中でこんなにも真剣になれるものがあるってうらやましくも感じたわよ
将棋といえば、ひと昔前の林葉直子棋士の不倫騒動しか知らなかった私も、将棋の世界に引き込まれたわ 私は一番初めのシニアのおばちゃんの物語が好きだわ
● 物事に真剣に取り組む姿
● 勝つ人がいれば負ける人もいる勝負の世界
● 自分を支えてくれるライバル、家族、先生のありがたさ
2020年芝中入試(国語)の入試問題を解いてみた
問題になっている短編は 、「初めてのライバル」
小5の野崎君と小2の山沢君、2回目の対局の場面です
茶箱
物語もおもしろく読みやすいし、主な登場人物が同じ小学生だから、気持ちもわかりやすいと思うわ
問題の文章量は、それほど多くありません
主人公は小学校5年生なので、読みやすい物語です
茶箱
小学校5年生のぼく(野崎くん)の気持ちを読み取るのが主な問題よ
対局相手の小学校2年生の山沢君の気持ちを問う問題もあり
茶箱
「むむ!山沢君生意気じゃないの!」と思ったけれど、対局後の会話で「山沢君も可愛い男の子ね」と、おばちゃんはほっこりしたわよ
真剣に対局に向かうからこそ、生意気にも見えるのよね
茶箱
2020年芝中入試(国語)は、物語に関する問題はすべて記述式だったわ
気持ちを読み取るのはそれほど難しくないけれど、それを文章にして試験時間内に書き出すのはたいへんよね
ちなみに、「かけ足で図書館に向かった」ときの気持ちを問う問題では、図書館の閉館時間が迫っているからかと思ったけれど、解答はちがったわ(笑)
おばちゃんが中学入試問題を解くと、どうも考えがピュアじゃなくて現実的になっちゃうのが悲しいわ
佐川光晴『駒音高く』役立つちょこっとメモ
●主人公:将棋を愛する男女7人物語
●舞台:将棋に関わる場所
●フリガナあり(難しい漢字のみ)
●本の長さ:235ページ(単行本)
●刊行年月:2019年2月刊行
●2019年第31回将棋ペンクラブ大賞文芸部門優秀賞受賞作品
●作者の伊予原さんは1965年生まれ。2011年『おれのおばさん』で第26回坪田譲治文学賞受賞している。
茶箱
佐川光晴さんの『駒音高く』は、厳しい将棋の世界の中にある、心があったかくなる物語7つだったわ
年齢もバラバラの男女7人が主人公になっているので、大人も子どもも読みやすい本よ
私は将棋はテレビでしか見たことがないけれど、テレビの画面からも伝わる緊迫した勝負の裏には、もっとさまざまな将棋物語があるのね
勝つ人がいれば負ける人がいる勝負の世界
厳しい世界だからこそ、支えになる人たちも大事な人たちなのよね
本を読んだ後、将棋番組を見る目も変わったわ
自分の知らない世界の本を読むと、今まではただ見てきたことが、まったく違うように見えるようになるのがおもしろいわよね
藤井聡太棋士がますます可愛くもあり、スゴイ人なんだわと思えたわ
でも私はどちらかというと羽生さんの方がタイプよ(笑)
*読みどころなどは、あくまでも私個人の意見です。
続けて学ぶための本は?
”ひとつの決断が勝負を決める”将棋のプロが教えてくれる、将棋だけでなく人生の決断力を学べる本は?
▼▼羽生善治さんの本『決断力』がおすすめ