今日のニュースも事件がいっぱい。
人間がいれば、集まれば起こる可能性が高まる事件。
私たちに衝撃を与えるような大事件や、日常に潜んだ闇がひょっこりと顔を出したような事件は、小説のモデルになることも。
実際に起こった事件・実話がモデルになった小説を紹介します。
*小説のため、あくまでも実際の事件をモデルとしたフィクションです。
小説は、事件の本当の真相ではないだろうけれど。
事件を起こした人間を掘り下げ、正面から向き合って書かれた小説は、事件そのものの怖さだけではなくて、人間の闇をも見えてヒンヤリする怖さを感じたよ。
- 『彼女は頭が悪いから』姫野カオルコ
- 『つみびと』山田詠美
- 『罪の声』塩田武士
- 『BUTTER バター』柚木麻子
- 『クライマーズ・ハイ』横山秀夫
- 『空飛ぶタイヤ』池井戸潤
- 『アッコちゃんの時代』林真理子
- 『グロテスク』桐野夏生
- 『塩狩峠』三浦綾子
- 『海と毒薬』遠藤周作
- 『東京島』桐野夏生
- 『八日目の蝉』角田光代
- 『24人のビリー・ミリガン』ダニエル・キイス
『彼女は頭が悪いから』姫野カオルコ
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【著者】姫野カオルコ
【出版社】文藝春秋
小説のモデルになった実在事件とは?
●2016年
東大生・東大大学院生5人による集団強制わいせつ事件
日本の最高峰といわれる大学生たちの起こした事件は、当時社会に大きな波紋をなげかけました。
彼らの学歴や家庭環境は、とっても恵まれたものなのに。
「そんな彼らが、まさか」
そんな彼らとはいったいどんな人間なのか?
悪魔のような男たちなのか?冷徹な感情のない男たちなのか?勉強しか頭にないオタク人間なのか?なんでもできちゃうエリートくんなのか?
読んでいるときから、読み終わっても気味悪さが漂う
加害者男性たちやその家族の気持ちが、小説といえども”自分勝手さ”で埋め尽くされている。
でもそんな彼らは、ごくごく普通に、いやそれ以上にマシな人間として生活をしている人たちなんですよ。
そこが一番怖い。
『つみびと』山田詠美
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【著者】山田詠美
【出版社】中央公論社
小説のモデルになった実在事件とは?
●2010年6月
大阪市内のマンションで母に置き去りにされた幼い姉弟(3歳と1歳)が餓死した事件
幼児虐待のニュースが報道されることが多すぎて、実際にどの事件だろうか?と思ってしまうほど。
どの事件も事件自体は、なぜそんなことが起きてしまったのか?と理解できないものばかり。
でも、どの事件にもそれぞれの家庭の実情があるため、幼児虐待事件を一括りにしてみる解決策を考えるのが難しく、これらの事件が無くならない原因なのだと思う。
著者の山田詠美さんが女性セブンのインタビューで「心ひかれたのは被告の女性だけ」と語っています。
この女性をモデルとして、小説では、犯人となる女性の生い立ちから、事件に到るまでの彼女の日常、そして事件後の彼女を、家庭や親子(母子)関係を軸として書いています。
事件を起こしたくて起こしたわけではないのかもしれないが、それは甘えなのか、生い立ちは原因になるのか?助けのない生活環境が引き起こした結果なのか?
事件そのものを悪とみなすのはカンタンだけど、その事件は社会が生み出したものなのか?その人個人の問題なのか?は、永遠の問題なのかもしれないなと思ったよ。
『罪の声』塩田武士
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【著者】塩田武士
【出版社】講談社
小説のモデルになった実在事件とは?
●1984年(昭和59年)・1985年(昭和60年)
グリコ・森永事件:大阪府・兵庫県で食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件。
40歳以上の人たちなら、きっとだれもが覚えているあの「グリコ森永事件」
あんなに証拠もあり、犯人との交渉も多かったにも関わらず、未解決事件となってしまいました。
つまり永遠に謎のままなんです。
いったいあの事件はどうして起こったのでしょうか?誰が犯人で、犯人と意図は何だったのか?
小説では実際に事件で使われた、子どもの声で現金の受け渡し場所を指定した「録音テープ」を中心に事件の真相に迫っていきます。
怪人21面相、キツネ目の男などなど、劇場型といわれた昭和の未解決事件がよみがえる!
ドラマティックに展開していたあの事件の真相が、さらに知りたくなってきた。
実際には、誰が得をした事件だったんだろうか?社会に訴えたいことがあったのだろうか?
もしかして、何か解決にできないように仕向けられていたモノなのだろうか?
『BUTTER バター』柚木麻子
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【著者】柚木麻子
【出版社】新潮社
小説のモデルになった実在事件とは?
●2007年(平成19年)~2009年(平成21年)
婚活(結婚活動)を利用した首都圏連続不審死事件
「え!この女性が犯人なの?」
この事件が社会に明らかになったときに、多くの人(特に女性)はそんな感想をもったのではないでしょうか
当時容疑者だった彼女の写真はぽっちゃりした素朴な容姿で、なのにどこかイヤらしく意地悪そうな、とても男性にモテるとは信じられないような雰囲気だったからです。
そんな彼女が男性たちを手玉にとるなんて!
彼女の半生に焦点をあてて、どうして彼女はそんな女性になったのか?をこの小説では書いています。
実はこの本が完成した後も、彼女は「出版社の男性と獄中結婚!」という衝撃的なニュースを私たちに提供してくれています。
彼女は、獄中からもバターのようにとろけるの魅力をただよわせているのでしょうか?
男が騙される女って、美人だったりカワイイと思っていたら大間違い
だとこの年になって知ったよ(笑)
この犯人の女性は、自分の魅力をもっと違う方面で発揮すればよかったのに。
『クライマーズ・ハイ』横山秀夫
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【著者】横山秀夫
【出版社】文藝春秋社
小説のモデルになった実在事件とは?
●1985年(昭和60年)8月12日
日本航空123便が群馬県多野郡上野村の山中に墜落した航空事故(日航ジャンボ機墜落事故ともいわれる)
「伊丹発、羽田行きの日航ジャンボ機が突然行方不明に」
真夏の夜に突然飛び込んできたニュース。
私はまだ子どもでしたが、あの日「クイズ100人に聞きました」を見ていて、その時に緊急速報でこのニュースが流れてきたのを今も覚えています。
著者の横山さんが新聞社の記者時代に遭遇した日本航空123便墜落事故を題材として、事件の真相を暴くというよりも、未曾有の大事故を取材する新聞記者の奮闘を描かれた小説です。
あの事件の犠牲者や事件に関わった人たち一人ひとりにも人生のストーリーがある。
報道とは?真実を語るとは?、記者ならではの視点から書かれた小説です。
あの大事件のニュースでは語られなかった壮絶な現場が小説を通して私たちの目の前に現れます。
今でも記憶残る「日航機墜落事故」
あの現場は飛行機が落ちたというニュース以上に、実際はもっともっとすさまじい現実が広がっていたんだと改めて感じたよ。
突然事故に巻き込まれた人たちの気持ちは計りしれない。
『空飛ぶタイヤ』池井戸潤
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【著者】池井戸潤
【出版社】実業之日本社
小説のモデルになった実在事件とは?
●1999年6月
広島で高速バス車両のハブが破損し車輪が脱落。母子死傷事故を引き起こした
●2000年(平成12年)
三菱リコール隠し事件
ただ歩道を歩いていたらタイヤが突然飛んでくる!
これはビックリ事故ではなく、なんと大企業のリコール隠しが原因で起こった人災なんです。
悪質な事件を通して、怠慢ともいえる企業体制を明らかにする小説になっています。
今や企業モノドラマといえばヒット連発の池井戸作品。
池井戸さんの作品ならでは、会社のもつ体質や、外側から見えにくい隠されたマグマのような悪が書かれています。
会社内部の人にしかわからない「うちの会社あるある」は笑えるうちはいいけれど。
それがどんどん当たり前になり、さらに事件にまでなってしまったら。
もしかしたら、自分の会社にも同じような悪のマグマが沸々としているかも。
『アッコちゃんの時代』林真理子
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【著者】林真理子
【出版社】新潮社
小説のモデルになった実在事件とは?
●バブル時代
事件というか時代 あの弾けていた日本社会に実在した人々、事件が登場する。
バブル時代とは、わずか10年ほどだがお金がまわりにまわり、人々がきらびやかな生活を送った時代だった。
知っている人、体感した人にしかわからない夢のような時間だったのだろう
あの時代を当時の事件や人びとをモデルにしてよみがえらせた小説は、バブルを知らない人には驚きを、バブル時代を知っている人には懐かしさを感じさせてくれるはず。
実名で登場する芸能人もいれば、脚色され登場する芸能人も、そして実際の事件も書かれています。
とにかくあの弾けていた時代の東京を体感しよう。
本に出てくる人物が誰なのかを知るともっともっとおもしろくなる。
当時のワイドショーを見ているように楽しめる本だよ
『グロテスク』桐野夏生
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【著者】桐野夏生
【出版社】文藝春秋社
小説のモデルになった実在事件とは?
●1997年(平成9年)3月9日
東電OL殺人事件:東京電力で働いていた幹部社員の女性が殺された事件
東電OL殺人事件は、一流企業である東京電力にお勤めする優秀な女性(一流大学:慶應出身)が夜の渋谷円山町で殺された!
学歴、大企業社会の日本に衝撃的なニュースが報じられ、さらに事件の真相が明らかになるにつれて、殺された女性の闇の部分(昼は一流OL、夜は娼婦)も見えてくるように。
一見華やかで充実した人生を送っていると思われる人にだって、影の部分がある。それがとっても深くて真っ暗なものだったら、表の部分との比較はさらに激しくなるのかもしれない。
女性のドロドロの心理を中心に書かれた小説です。
東電OL事件は、殺人事件の残虐さよりも、被害者女性に対して「なんの不自由もなく見える人でも闇はあるんだな~」と思ったことを覚えています。
人の心の闇は見えないからこそ怖い
同じ女性として理解できてしまう、女性の心のドロドロさを描きだしていて、本のタイトルどおり「グロテスク」でした。
『塩狩峠』三浦綾子
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【著者】三浦綾子
【出版社】新潮社
小説のモデルになった実在事件とは?
●1909年(明治42年)2月28日
北海道にある塩狩峠でおきた鉄道事故。若き鉄道職員が多数の乗客の命を救うため殉死
キリスト教の信仰をもち、人のために自分の人生を犠牲にした鉄道職員がいた。
数年前に話題になった本『これからの「正義」の話をしよう 』(マイケル・サンデス著)のなかで正解のない究極の問題になった事件が、実は明治時代に実際に起こってたのを知っていましたか?
この本では事件で犠牲になった彼の生涯をモデルとして、小説として書かれています。
感動秘話としてだけでなく、人間の生き方を考えることのできる本です。
大学時代に、初めてこの本を読んだときの衝撃はすごかった!
あれから何度も自分はこんな状況になったとき何ができるのだろうかと考えることがあるが、未だによくわからない。
一生涯わからないだろうな。
実際にその状況になったときに自分はとっさにどんな行動を起こすのだろうか?
『海と毒薬』遠藤周作
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【著者】遠藤周作
【出版社】角川文庫
小説のモデルになった実在事件とは?
●太平洋戦争中
捕虜となった米兵を生きたまま解剖する、生体解剖の被験体として使用した事件(九州大学生体解剖事件)
前作の『塩狩峠』の三浦さんと同様に著者の遠藤周作はキリスト教を信仰していたため、信仰が芯となって書かれた小説だと思う。
生きている人を解剖するとは、つまり殺人に値する行為だ。
そんな考えただけでも恐ろしい実際の事件を参考にして書かれた小説。
事件の恐ろしさとともに、何か目的はあったとしても、自分の想いとは別に犯罪になる行動を起こしてしまう人間の弱さも書かれた小説だった。
犯罪を行うのは悪人だけではない
ごくごく普通の人さえが犯罪を犯してしまうだなと思うことが怖い。
その時の犯罪から逃れられない状況や、集団で犯罪に誘われたら?
自分の信念を守り通せるのかな。
『東京島』桐野夏生
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【著者】桐野夏生
【出版社】新潮社
小説のモデルになった実在事件とは?
●1945年~1950年
アナタハンの女王事件:太平洋マリアナ諸島に位置するアナタハン島で発生した複数の男性の怪死事件。多くの謎を残している
これが実在の事件が元になった小説なんて!
と衝撃が走るストーリー。
無人島で女性一人、夫と漂流男性23人と中国人11人たちの共同生活とは?
不可解な死や、入り乱れた性が横行する恐ろしくも人間の動物らしさが描かれた小説です。
そこに女一人しかいなかったら。
男性たちにちやほやされるのか?男性たちに征服されてしまうのか?男性の仲間になるのか?
怖ろしすぎる内容にも関わらず、人間も生物の一種類にすぎないのかと、どこか笑える小説だったよ。
それにしても、この小説の実在事件があることにビックリ。
『八日目の蝉』角田光代
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【著者】角田光代
【出版社】中央公論社
小説のモデルになった実在事件とは?
●1993年12月
日野不倫殺人事件:放火により子ども2人が焼死。逮捕されたのは夫の不倫相手の女性だった。
この不倫殺人事件をヒントに書かれた小説の中では、女性が不倫相手の子ども(女の子)を誘拐して3年半もの間、自分の子として育てようとする逃亡劇が第1章で書かれています。
そして、第2章では逃亡が終わった後、誘拐された女の子が成長し大人になった話になります。
ちなみに小説では火事を起こすことも殺人もありませんので、事件とはだいぶ違った印象がありますが。
誘拐した女性・誘拐された女性、二人の女性を通じて「母性」をテーマにして書かれた小説です。
不倫・誘拐という愛憎劇ではなく、女性の好きな人の子どもが欲しい、子どもを愛したいといった女性のもつ自然な気持ちを感じる小説だった。
誘拐は犯罪だし、不倫は倫理違反だけど、人としての心はそれだけでビシビシと判断できない難しさがあるんだなと思ったよ。
『24人のビリー・ミリガン』ダニエル・キイス
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【著者】ダニエル・キイス
【出版社】早川書房
小説のモデルになった実在事件とは?
●1977年アメリカ
3人の女性に対する連続強姦及び、強盗の容疑で逮捕されたが、彼は解離性同一性障害(解離性同一症)を患っていると主張した
信じられます?
ひとりの人間に24人の性別も年齢も違う人格が存在するということを。
アメリカでひとつの凶悪事件から明らかにされた人格障害をもつという犯人、ビリー・ミリガン。
犯罪を犯したのは彼の中にいるひとりの人格だという。
本人への数百回に及ぶインタビューや関係者の証言をもと、ビリーの存在を明らかにし、「多重人格」という障害、それを抱えるビリーの心が書かれた本です。
*この本は小説ではなくノンフィクションになっています。
この本を読んだときの衝撃はすごかった!
あれからテレビで何人か多重人格の人を見たことがあるけれど、未だリアルに理解するのが難しいが。
何よりも、初めてこの本を読んだときの衝撃は忘れられない。
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