原田マハ『常設展示室』
【著者】原田マハ
【出版社】新潮社
ざっくり本紹介
★ アートと小説を結び付ける原田マハさんの6つの短編集
★ 6つの短編集どれも、アートのもつ不思議な力がストーリーの鍵となっている
★ 6つの短編集どれも、独身の女性が主人公で、絵をとおして家族との繋がりが書かれている
★ フェルメール・ラファエロ・マティスの絵が登場する
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アート小説を数多く描いている原田マハさんのアートを鍵にした短編集です。
アート作品そのものや、画家の人生をえがいた小説ではありませんが、ストーリーの鍵となるモノとしてアート作品がそれぞれ登場します。
アートのある女性の人生6通りが楽しめます。
群青
●主人公
ニューヨークのメトロポリタン美術館で働く日本人の美青
●鍵となる絵
ピカソ <盲人の食事> 1903年 ピカソの青の時代の作品
アメリカニューヨークのメトロポリタン美術館の常設展示作品
デルフトの眺望
●主人公
現代アートを取り扱う大手ギャラリーの営業部長の七月生(なづき)
●鍵となる絵
フェルメール <真珠の耳飾りの少女><デルフトの眺望> 17世紀オランダ
オランダのハーグにある マウリッツハイス美術館の常設展示作品
マドンナ
●主人公
現代アートを取り扱う大手ギャラリーに勤めるあおい(「デルフトの眺望」の主人公七月生の同僚)
●鍵となる絵
ラファエロ <大公の聖母> イタリア・ルネッサンス期
イタリアフィレンツェにあるパラティーナ美術館の常設展示作品
薔薇色の人生
●主人公
県の地域振興局内の「パスポート」で働く派遣社員の多恵子
●鍵となる絵
ゴッホ <ばら>
上野の西洋美術館所蔵の常設展示作品
豪奢
●主人公
下倉紗季(さき)現代アートギャラリーに就職したがとある理由で退職
●鍵となる絵
マティス <豪奢> 色彩の魔術師といわれたマティスの初期の作品
フランスパリにあるポンピドー・センターの常設展示作品
道
●主人公
翠イタリアで現代美術を教えていた経歴をもつ日本芸術大学の教授(小さなころに生き別れた兄がいる)
●鍵となる絵
東山魁夷 <道>
東京竹橋にある国立近代美術館の常設展示作品
6つの作品のなかで、ちょっと異質な感じがするのが「薔薇色の人生」でした。
他の作品の主人公たちはアートに関連した仕事をしていてアートに詳しいのですが、「薔薇色の人生」の主人公多恵子はアートに興味がないのです。
だからなのか、この作品が妙にリアルがあるのに「ありえないよね!?そんな展開なの」とちょっと興奮するほど、ストーリーを一番楽しめました。
どちらかというと前半の話よりも、中盤にかけての話の方が、ストーリーとしておもしろく読めます。
なので、最初の方だけ読んで、う~んどうしようと思ったら、真ん中あたりから読んでみるのもおすすめです。
ちなみに「華奢」は、現代アートを買いあさるお金持ちのIT起業家の男性と付き合うことになった女性の話ですので、なんだかワイドショーを見ているように楽しめましたよ(笑)
美術館のキュレーターとして活躍した原田マハさんならではの、アートの現場感あふれる小説が楽しめる本です。
ただ、残念ながら鍵となる美術作品の写真はありません。
なので、自分で調べながら本を読むとさらに本が面白くなると思います。
本の表紙の絵
オランダのハーグにある マウリッツハイス美術館の展示室に飾られたフェルメール <デルフトの眺望>です。
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