人気女性作家、宮下奈都さんの初期作品『スコーレNo.4』は、女性の成長を描いた作品で、主人公の女子がまるで自分のような気分になって読んだ人も多かったですよね。
そんな『スコーレNo.4』に登場した女子たちを新たに描いたスピンオフ作品が読める『つぼみ』があるのを知っていますか?
改めて2冊を続けて読んでみたところ、新たな発見をしました。
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『スコーレNo.4』
【著者】宮下奈都
【出版社】光文社
人気女性作家、宮下奈都さんの初期の代表作ともいえる作品です。
麻子ちゃんの成長記録
麻子ちゃんという女性の成長記録ともいえる、NHKの朝の連続テレビ小説のような小説です。
主人公は自分に自信のない女の子麻子ちゃん
麻子ちゃんは、仲良しの美人な妹の七葉ちゃんと、年の離れた妹の紗英ちゃんの3人姉妹です。
美人な妹を引き合いにして卑屈になってみたり
とにかく自分に自信がなく、自分を上手くできない麻子ちゃんの中学時代、高校時代、大学時代さらには社会人生活までストーリーは続きます。
実は高スペック?麻子ちゃん
ストーリーから考えるに、麻子ちゃんけっこう男性にもてて、頭もよくて(英検も1級!)、バイヤーという華やかな職業にもついていて。
それでも自分に自信がないって?マジですか?とツッコミたくなりました。
麻子ちゃん、実はかなりの高スペック女子なのではないでしょうか?
自己否定が激しすぎ(笑)麻子ちゃん
美人すぎる妹がそばにいて、自分を表現するのが上手な妹がうらやましくて、自分を見失ってしまったのかな?
妹が嫌いなわけじゃないけれど、なんとなく心に壁をつくってしまう、話せないことがどんどん増えてしまう。
家族の中での立ち位置を比べてしまったり。
年が近い姉妹ならではの、自分でも見えない競争心があるのでは。
実は私も姉妹のように育った同じ年の従妹がいます。
小さなころからいつも一緒で楽しかったのですが。
成長するにつれて、同じだと思っていた従妹が自分とは違うことに気づき、さらに周りの大人たちが自分たちをいつも比べているような気がして、気づくと彼女のことをなんとなく避けるようになってしまいました。
彼女が嫌いじゃないのよ。
でも一緒にいると、どんどん自分が嫌な子になるような気がしてたまらない気持ちになったものです。
なので、麻子ちゃんの気持ちがとってもよくわかります。
中高時代の麻子ちゃんのストーリーは、まるで自分のことのように読んでしまいました。
幸せになって麻子ちゃん
麻子ちゃんの恋愛はけっこう激しい
中学時代の勘違い恋愛は笑えた
高校時代のプラトニックな恋愛はドキドキ
社会人になってからの恋愛は、突然のハプニングから恋に落ちる系
若い頃の、想いが上手に伝わっていれば違った方向に向かったかもしれない恋愛は、多くの人が体験しているはず。
甘酸っぱい恋愛は大人になっていい思い出になっていることが多い気がします。
(大人になるとかなり自分勝手に思い出がすり替わっていることも多々ありますが)
麻子ちゃんの恋愛を読みながら、「うんうん、若い時はそんなもんよ」と恋愛マスターのように麻子ちゃんを諭している自分に笑えました。
『つぼみ』
【著者】宮下奈都
【出版社】光文社
『スコーレNo.4』の発売2007年から10年後、2017年に発売された『つぼみ』
麻子ちゃんは登場せず
『スコーレNo.4』の続編ではないけれど、『スコーレNo.4』の主人公を取り巻く登場人物の女性たちが、主要人物となった小説が書かれています。
残念ながら『スコーレNo.4』の主人公麻子ちゃんのその後はでてきません。
『つぼみ』は6編の短編集になっていて、うち前半の3作品が『スコーレNo.4』と関連のある作品になっています。
スコーレで主人公だった麻子の妹・紗英
麻子の叔母・和歌子
麻子の父の元恋人・美奈子
が登場しますよ。
『スコーレNo.4』ではほぼ脇役(出てこない)彼女たちが主人公となっています。
「華道」で自分を表現する女たち
3人に共通するのは「華道」
花に対する向き合い方がそれぞれの視点から書かれています。
年齢も、個性も違うそれぞれの女性が、「華道」という花で自分を表現する方法に向かい合います。
人生について悩んでいるのか
好きだった男性を思うのか
自分自身の在り方について考えるのか
花を生けるという表現が自分の心や性格を表してくれることに、彼女たちは夢中になるのです。
実は私も華道経験したことがあります。
基本の形ができるようになると、自分らしさを表現したくなり、とっても楽しかったの
を思い出しました。
自分の思いが形になるのって、確かにおもしろいんですよ。
紗英ちゃんは小悪魔系?
麻子ちゃんの一番下の妹の紗英ちゃんに大きな焦点が当たっています。
高校生になった紗英ちゃんは美人ではないようだが、お姉さんたちと同じく人を惹きつける力はもっているようです。
そんな紗英ちゃんは
「三年にひとりくらいの割合で、私を毛嫌いするひとにでくわしてきた」
【引用:『つぼみ』「まだまだ」より p.89】
と、自分に向かってくる訳のわからない悪意について考えたりもします。
「あ~、それってみんなあるんだ!」と私。
この小説で今さらながら知りましたよ、人の悪意。
私もあったんですよね。小中学生の頃。
なぜかその人(大人も子どももいました)だけに嫌われる、よく知らない人なのに。
今でも覚えているくらいなので、子ども心にはけっこう傷ついていたんですけれど、ななぜか親にも誰にも言えなくて。
「もしかして、アレッて私へのやきもちだったのかしら?」と大人になると、子どものころの繊細な気持ちはなくなり、自分勝手に考えられますね(笑)
▼『つぼみ』は中学受験問題にも登場していますよ。詳しい内容はこちらの記事をどうぞ。
2冊からみえた”女子のやきもち”
あ~!そうなのか。
二つの作品を読んでいて、なんともいえない若い自分を思い出す甘酸っぱい気持ちになった理由は、だれかへの言葉で表せないモヤっとしたやきもちと、だれからか受ける訳のわからないやきもちが自分のなかで交差しているのを思い出したからなんだと思います。
その気持ちは、いまでもふとした瞬間に顔をだします。
女子はいつまでたっても女子なんですよね。
大人になっても女子って難しいな。
それにしても、さすが宮下奈都さん
あらゆる年代の女子の心を書き出すの上手いな~とつくづく感動しました。
まとめ
宮下奈都さんの書く『つぼみ』は『スコーレNo.4』の続編とまではいきませんが、登場人物がリンクする短編集になっています。
それぞれを読んでもおもしろですが、せっかくならば『スコーレNo.4』を読んだあとに『つぼみ』を読むのをおすすめします。
2冊読むと、年齢に関係なく難しい女ごころが見えてきます。
『スコーレNo.4』では見えてこなかった真実もチラチラと見え隠れしておもしろいですよ。
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