2021年4月17日更新
私、最近となりに住む男女が気になって仕方ないのです。
20代の男性と30代くらいの女性なのですが一緒に暮らしているのに、一緒に出掛ける姿を一度も見たことがないのです。
カップルではないのか?仲が悪いのかしら?余計なお世話ですが、ずっと謎だったのです。
が、最近思い当たった考えがあります。
そうだ!きっと二人は姉弟に違いない。
そう考えると二人の顔が似ているような気にもなってきましたし(笑)
小説でも姉と弟を題材にしたものがありますよね。
異性だからこそ、お互いを家族として大切に思いながらもそっけない態度をとってしまう姉と弟。
ハタからみたら笑ってしまったり、ほんわかしてしまったり、こころをうち涙をしてしまったりする、姉と弟の世界が楽しめる小説3冊を紹介します。
姉と弟の微妙な関係が楽しめる小説
茶箱
家にいる時間が長いときこそ大事な家族や兄弟(姉弟)をじっくり観察してみれば、新たな発見があるかも!
江國香織『こうばしい日々』
[著者] 江國香織
[出版社] 新潮社
”こうばしい日々”
タイトルからも、江國香織さんがもつ日本語センスの良さが抜群に光ります
こうばしい日々にでてくるのはアメリカに住む大学生23歳の姉と弟11歳
二人は小さなころは離れて暮らしていて、姉は18歳になってアメリカにやってきます。
物語の主は姉と弟の関係ではなく、弟の成長物語なのですが、年の離れた姉と弟の付き合い方、日米という違った環境で育った姉弟の価値観の違いなどが書かれていてとっても面白いです。
若い姉弟のもつ、どこか恥ずかしい感情もみずみずしく描かれているのも魅力。
短編小説なので気軽に読み始められます。
「こうばしい日々」を2倍楽しめるちょこっとメモ
この本には2編の物語が入っていて、もうひとつは「綿菓子」という物語
こちらは中学生の女の子が主人公で、彼女には年の離れた姉がいます。
「こうばしい日々」とセットで読むと、姉をもつ妹と、姉をもつ弟、男女の違いも楽しめるようになっていますよ。
『小野寺の弟、小野寺の姉』
[著者] 西田征史
[出版社] 幻冬舎
タイトルがそのまんまですし、姉と弟との小説といったらこの本を思いうかべる人も多いかも
30代と40代の独身姉弟の二人暮らし
すごく仲がいいわけではないが、ふたりで買い物に行ったり、一緒にご飯を食べたり家族としては上手に仲良く暮らしているけれど。
心の奥底にある気持ち、二人の恋愛に対する考え方やトラウマ、お互いを(家族として)想いあう気持ちの強さは、上手に表現できない姉と弟なんです。
小さなころから支えあって生きてきた姉弟。不器用な二人がおもしろくもあり、お互いを想う優しい気持ちが、読んでいる読み手にもじわじわと伝わりまろやかな気持ちになれる本です。
小野寺姉と弟が二人以外の人に心を添えて暮らせる日々はやってくるのでしょうか?
「小野寺の弟、小野寺の姉」を2倍楽しめるちょこっとメモ
映画にもなっています。
姉役の片桐はいりさん、弟には向井理さん、二人の生活風景が小説そのままで笑えますよ。
『おとうと』
[著者] 幸田文
[出版社] 新潮文庫
舞台は大正から昭和初期。
作者幸田文(幸田露伴の娘)の自叙伝的小説です。
げん(姉)と、3歳違いの弟の碧郎(へきろう)
ちょっとしたことがきっかけで人生が狂い始め不良的な行いをするようになった弟が、病に倒れてしまいます。
当時は不治の病であり感染病として恐れられていた結核にかかってしまう弟。
弟のせいでイヤな思いをしようとも、姉のとる行動はもちろん決まっています。
不良になった弟に対しても変わらぬ愛情をもつ姉、病気の弟を必死に看病をする姉
姉の弟を想う心が読む私たちの心をぎゅーとさせます。
上手に表現できない姉と弟の思いがはがゆく、「家族ってそんなものだよな」とつくづく感じてしまう。
家族だからわかってもらえるだろうと、甘えてしまう・意地をはってしまう、だれもが感じたことのある思いが書かれた小説です。
「おとうと」を2倍楽しめるちょこっとメモ
弟の死の原因になった結核。
この病気で多くの人が亡くなっています。
同じく作者の実体験をもとに書かれた堀辰雄の小説『風立ちぬ』では、婚約者が結核に冒されてしまいます。
姉と弟とは違った、男女二人の愛情表現を読み比べてみてはどうでしょうか?
茶箱
姉と弟の関係が楽しめる小説3冊はいかがでしたか?
時代は違えども、異性だからこそ微妙な態度をとってしまう姉と弟の関係はおもしろくもあり、はがゆいものにも感じられます。
大事な人でありながらも、その思いを照れくさくて表現できないのは、時代が変わってもみんな同じなんですね。
言葉や行動で上手に表せなくても、大切な想いは伝わりますように。