2021年4月2日更新
茶箱
時空を超えた『くいしん坊!万才』のような本だったわ
【林綾野】「くいしん坊!万才」食通画家4人の本
『あなたは半年前に食べたものでできている』
ちょっと前にそんな本が流行りましたが、体を作るだけでなくその人自身の性格や雰囲気にも影響しているような気がします。
その人がよく食べるものや好きな食べるものって、その人“らしさ”がでますよね。
甘くてかわいいお菓子が好きな人
辛いものが好きな人
新鮮な野菜が好きな人
お肉が大好きな人
なんとなく好きなものを聞くと「うんうんわかる」ってうなずきたくなること、よくあります。
茶箱
同じように考えれば、画家たちが好んで食べたものが、制作作品に大きく影響しているはずよね
林綾野さんの本では、作品を見ながら画家の食べたもの、画家自身の姿が浮かんでくる新しい絵画の見方を楽しめます。
紹介するのはセザンヌ、フェルメール、ロートレック、クレーの食卓です。
(林さんは他にもモネとゴッホの美術と料理に関する本を書いています。)
茶箱
本を読んでいると、テレビ番組「くいしん坊!万才」を見ているような気分になってきたわ(笑)
林野さんが画家といっしょに、絵に描かれた食べ物や、画家がよく食べただろう食事メニューを一緒に食べながら「これ好きですか?」「奥さんの手作りですか?」と、インタビューをしているような雰囲気が伝わってくる本なのよ
● 画家の作品も見られるうえ、画家の生い立ちや家族や、画家の生きていた時代や社会についてもわかる
● 本の内容は画家についての話が半分、料理レシピが半分くらいの分量
● 画家の作品などから作者の林野さんがインスピレーションを受けたものの食事メニューが再現されている(レシピ付き)
● 本のサイズは正方形のかわいいサイズ 表紙がすてきな画家の作品になっているので、家に飾りたくなるような本
『フェルメールの食卓』
ヨハネス・フェルメール(1632年~-1675年)はネーデルラント連邦共和国(オランダ)のバロック期を代表する画家。
フェルメール関連の展覧会となれば、毎回恐ろしいほどの行列をできる大人気の画家です。
フェルメール自身は謎が多いのですが、本ではフェルメールが生きた17世紀のオランダが詳しく紹介されています。
茶箱
フェルメールが生きた時代は、大航海時代の中心にあったオランダ
当時のオランダには、世界中から珍しいモノや食材が集まっていたから、フェルメール作品にもそれが大きく反映されているのね
食卓だけではなく、ファッションや室内の家具や、キッチングッズ、楽器、筆記用具といったモノにもスポットを当てているから、フェルメール作品から当時のライフスタイルが見えてきて、おもしろかったわ
料理レシピ
1667年に出版された食の指南書『賢い料理人』をヒントに当時の食卓を再現したものから、現代のオランダ料理が紹介されています。
実際に家庭の食卓に並びそうな料理、食材がそのまま使われている料理が多く、ヨーロッパといえばの食材”ホワイトアスパラガス”も登場します。
『クレーの食卓』
パウル・クレー(1879年~ 1940年)は20世紀のスイスの画家、美術理論家。その作風は表現主義、超現実主義などのいずれにも属さない独特のもの。
作者の林さんは”日本パウル・クレー協会のキュレーター”なので、クレーはお得意中のお得意。
この本一冊からもクレー愛があふれちゃってます。
茶箱
クレーは手紙や日記にも食事の内容を書くくらい、食べることも料理をすることも大好きだったので、クレー家の食卓にはさまざまな料理で彩られていたそうよ
料理レシピ
スープからサラダ、パスタ、メインディッシュからデザートまで。フルコースのレシピが一通りそろってます。
『ロートレックの食卓』
ロートレック(1864~ 1901年)は、伯爵家に生まれたフランスの画家。
子どものころ怪我をしたため脚の発育が停止し、成人した時の身長は152cmほどしかなかった。
貴族の家に生まれながら、身体的に恵まれることのなかったロートレック。
あの人づきあいの苦手だったゴッホとも付き合いのあったロートレック。
幸福だった子ども時代から、どんどん社会の中で上手に生きられない弱者になってしまうロートレック。
パーティーや晩餐会の招待状やメニューを直筆で描いたロートレック。
1897年新しいアトリエのお披露目会「牛乳パーティー招待状」がとってもかわいいのが印象的、仲間と食事をすることが大好きだったんですね。
茶箱
ロートレックは波乱万丈の人生を送りながらも、美味しいものを食べるのは最後まで続けられたようで、ちょっとほっとしたわ
料理レシピ
美食家として知られたロートレック
親友モーリスジョワイヤンがまとめた、ロートレックが残したレシピ集『独身モモ氏の料理法』を参考に、ロートレックの食卓をよみがえられせています。
ゴージャス感のある料理で見た目も素敵です。
家族や仲間で楽しみながら食べられる料理が多く載っています。
『セザンヌの食卓』
ポール・セザンヌ(1839年~- 1906)はフランスの画家。ポスト印象派の画家として、20世紀の美術に多大な影響を与えたことから「近代絵画の父」といわれる。
茶箱
セザンヌが描いた食べものっていえば「りんご」しか思い浮かばないから、本に出てくる料理は、りんご料理特集かな?と思った美術初心者の私ですが(笑)
安心してください!
りんごだけの料理レシピではなかったです
料理レシピ
もちろんりんご料理(りんごのお菓子)レシピもあり。
なぜか青森のりんごの紹介もあり、料理はりんごがメインといえるかも。
静止画のようににこりとも笑わないモデル、こちらをじっとみつめるモデル、カチンカチンに固まったモデルというイメージが強い、セザンヌの描く肖像画。
その肖像画と同じように紹介されている料理も素朴でどことなく真面目な料理が多かったです。
茶箱
林綾野さんの書く”食通画家4人の食卓”は、お腹が減ってくるアート本だったよ
林さんはセンスの良い”くいしん坊”さんに違いありません。
ぜひ林さんをくいしん坊としたアート番組があればいいのにと思ってしまうほど、アートと料理が楽しめる本でした。
*この記事の画家についての文はWikipediaを参考にしています。
茶箱
2020年浮世絵と食べ物がテーマになった展覧会が開かれて、林綾野さんのレシピも展示されたわよ
展示されたレシピが載っている本は『浮世絵に見る 江戸の食卓』です