『ゴッホの愛した庭風景』
わずか10年しかない画家人生のなかでも多くの作品を生み出したゴッホ。
自分や周りの人間を描いた肖像画、花や部屋の家具などを描いた静止画などが有名ですが、この本はゴッホ作品の中の「庭」に特化してつくられています。
『ゴッホの愛した庭風景』は、ゴッホにとって「庭」とはどんな存在だったのかがわかる本です。
『ゴッホの愛した庭風景』の内容
初期の頃の暗い質素なイメージの庭
パリにでてきて画家仲間から学んだ技法で描いた光あふれる庭
アルルで描いた明るい庭
晩年オーヴェルでのダイナミックな色使いとうねるような筆のタッチの庭
どれもゴッホが愛して描いたあらゆる庭がオールカラーで楽しめます。
ゴッホが住んだ場所ごとに年代順に描かれた庭が掲載されています。
住んだ場所によって作品が大きく変化していることにびっくり。
茶箱
同じ人間がわずか10年の間にこんなにも描き方を変えているなんて、ゴッホの器用さ、才能にも衝撃を受けます
本の装丁
本の装丁も見どころになっています。
背表紙には布が使われたこだわりのあるつくり。
タイトルの文字は書道で書かれたような書体で日本ぽさがあるのも素敵です。
茶箱
浮世絵を通して日本に憧れていたというゴッホにぴったり
本の大きさは横 16.8 x 縦23.6 cmほど。
画集としては小さめサイズなので持ち運びも簡単ですし、気軽にページをめくりやすいサイズになっています。
表紙は厚手のしっかりしたものなので、長年本棚に置いておけます。
ゴッホと庭の関係とは?
「生涯、自身の庭をもたなかった」
という一文がズシっと響きました。
同じように庭を多く描いた印象派の画家として活躍したモネは、自分で庭を持ちその庭を育ててその庭を作品『睡蓮』として表現しましたが、ゴッホは真逆なのです。
ゴッホは自分自身の庭ではなく、誰のものでもないその土地に無限に広がる自然や、人の庭、病院の庭といった誰かが育てた庭を描いています。
「庭」という言葉を「人間関係」「家族(弟のテオ以外)」という言葉に置き換えるとゴッホの人の愛情に恵まれなかった人生を表現しているような言葉のような気がします。
作品のモデルになってくれる人を探すのも大変だったくらい人間との関りが苦手だったというゴッホ。
モデルを頼む必要もない「庭」
自由にどんなふうに眺めて見つめてもいい「庭」
マイペースにひとりで没頭して描ける「庭」
は、ゴッホにとってありがたいものだったにちがいありません。
さらには庭には木、草、花といった、もの静かな生き物たちがいます。
静かな生き物たちはゴッホの語りかけにも静かに答えてくれたのかもしれませんね。
ゴッホの描いた庭には自然が生きている温かなぬくもりを感じます。
茶箱
ゴッホと庭との相性は良かったようです
▼▼ゴッホの人生をたどる本はこちらがおすすめです。
まとめ
茶箱
庭を愛したゴッホの人生がわかるよ
『ゴッホの愛した庭風景』いかがでしたか?
ゴッホはこんなにも絵画の技術は吸収できる能力があるのに、どうして人との付き合い方感情の読み取り方は学べなかったのか?
不思議ですが、それが絵画に抜き出た才能をもったゆえのことだったのかもしれませんね。