2021年4月21日更新
柚木麻子『本屋さんのダイアナ』
【著者】 柚木麻子 著
【出版社】新潮社
● 自分って、人と違うけれど変なのかな?と感じている
● 自分の生きている環境がつらい
● 他の人の生き方が、うらやましくて仕方ない
● 自分に自信がもてず、自分を上手に表現できない
『本屋さんのダイアナ』
まったく異なる境遇が生み出す友情は成立するのか?
読んでいる間ず~と”温かな心”を感じられるステキな本
本好きGirls必読本!
『本屋さんのダイアナ』あらすじ・おすすめポイント
ダイアナは、本が大好きな女の子。
ちょっと普通?の感覚とは違う母親と二人ぐらし本が好きなことで、自分とはまったく正反対の環境で育った女の子、彩子と親友になります。
本書は、ダイアナの小学校時代から社会人になるまでの青春小説でもありますし、ダイアナと彩子の女の友情物語でもあります。
ダイアナの生き方や、ダイアナの周りにいる大人や友達の生き方を見ることで、誰もが悩みを持っていること。
そして、その悩み(秘密)こそが、その人の個性をつくりだしているということを、知ることができます。
ダイアナと彩子を結びつけたものは「本」
二人とも本を読むことが大好き。
小説の中でも『赤毛のアン』『秘密の花園』『おちゃめなふたご』『おてんばエリザベス』『ライ麦畑でつかまえて』『長くつ下のピッピ』など、本好き女子にはたまらない本のタイトルが出てくるのも、この本の魅力です。
『本屋さんのダイアナ』気になるフレーズは?
人生がこんない上手く行かないなんて、どんな本にも書いてなかったよ。
ダイアナが小さな頃から探していたお父さんに失望してしまうシーンでの、ダイアナのお母さんの言葉。
人生は、もちろん本で読んだようには行かないことがほとんどだけど。
もしかしたら、本のような奇跡?本のような理想的な結果が生まれるかもしれない、と思えることができるのだって幸せかも。
だって本を読んでなかったら、そんな幸せな期待や希望ももてないかもしれないからね。
【中学受験】中学入試(国語)出題された小説
柚木麻子『本屋さんのダイアナ』は、2016年駒込中学の入試(国語)で出題されました。
出題箇所
小学6年生のダイアナ
クラスの男の子山口君にからかわれてしまった後のシーン
ダイアナをなぐさめてくれたのは親友の彩子ではなく武田君だった!
ダイアナと彩子、武田君の男女3人のそれぞれの気持ちを読み取る問題が出題されました。
悩みはその人の魅力
主人公のダイアナの生き方にも注目してほしいのですが、この本の魅力は、ダイアナの周りの大人や友達なんです。
いろいろなタイプの大人・友達がでてきます。
それぞれ違ったタイプの人なのですが、みんなが何かしら秘密や悩みを抱えている。
この秘密や悩みがその人の自身の魅力にもなっているのがおもしろいなと思いました。
異なるそれぞれの人生が交わるたびに、お互いを助け合っていくのですから、人生っておもしろいなと思えます。
私はね、そんな風に生きられなかったの。プライドが高くてそのくせ恐がりで、自分と違う個性を認めることができなかった。他人を見下さずには生きて来られなかったの。だから、本物の友達なんていたことがなかった。
ダイアナや彩子よりもだいぶ大人の私には、主人公ダイアナの親友彩子ちゃんのママの言葉が、心に刺さりました。
彩子ちゃんのママは、他の人から見たら、だれもがうらやむような完璧な女性なのに、本人は自分をこんな風に思っている。
私は、自分に近い年齢の、この完璧な女性の言葉にグサリきました。 大人の多くの女性が、「私も!私も!」と思ったんではないでしょうか。
この本を読むと、実は、悩みってその人の個性やその人らしさを作り出す、一因なんだな~と思えるはずです。
悩みを解決したいけれど、その悩みと上手く付き合っていくことも大事なことなんだということを学んだような気がします。
そして、わりと真剣に本人が悩んでいることも、実は周囲の人は気づいていないぐらいのことだったりするんですよね。
自分では、名前も生まれる家庭も、選べない人生のスタートはみんな平等。
でも、始まった人生には、人それぞれで、すべて平等とは決していえないし、平等になることなんてありえません。
私たち人間は、与えられた人生を精一杯生きるほかないんだなあ~と感じます。
悩んでも仕方ないことも、あるんですよね。
まとめ
柚木麻子さんの『本屋さんのダイアナ』は、心が温かくなる本です。
人と違う自分って、「普通のこと」「当たり前のこと」に思えてくる不思議な本でもありますよ。